05 喫茶店で始まる取り引き ページ20
休日の午後。
街は騒がしさを増し、デパートなどの娯楽施設や大通りには人込みで溢れ帰っている。
大通りなどから、少し遠く離れた一角。
洒落た雑貨店や高そうな外観をしたレストランなどが立ち並ぶ場所の一つ、Aは今日も喫茶店の中で優雅に午後を過ごしていた。
「ふふ、もう降参ですか。残念ですねえ?」
「それはどうでしょう、か」
優雅、と言っても優雅という言葉をどう捉えるかによって、その言葉の意味は大きく違ってくる。
無論、喫茶店で駒を “ 奪い合う ” のは、一見言葉を見れば優雅とは言い難いものかもしれない。
Aは実に楽しそうに笑みを浮かべながら、一番端に立つ駒、ルークを前へ移動させる。
「攻略法を知らないまま計画を立て、捨て駒をただ前へ進めていくのはあまり良い策とは言えない」
テーブルを挟んで彼女と対峙する男は淡々とした口調でAに語り掛ける。
男は黒のビショップを彼女の駒である白のポーンが立つ場所まで動かすと、ポーンを取り上げた。
「……あなたの言う攻略法を私が知らないフリをしていたとしたら、どうします?」
彼女がそう言いながらクイーンを左斜め前へ移動させると、彼は微かに眉を動かした。男は掛けている丸眼鏡を光らせながら「フェイク、ですか」と言うと、ナイトを動かす。
そのナイトはAのキングを取ろうとしているのか、それとも確実に端へ端へと追いたてているのか、それは定かではない。
しかし、彼女の駒であるキングが今現在立っている位置は、彼女に取って危ういものだった。
「……さあ、どうぞ」
だったにも関わらず。
彼女が動かしたのは、対峙している彼の駒であるキングからは離れたルークだった。
それを見て、彼は一瞬目を疑った。しかし、ナイトを移動させると、もう防ぐ手がないことを告げる言葉を口にした。
その言葉を聞いて、彼女は吐息をつくと
「……ふう、詰めが甘いですね」
と、微笑んだ。
Aはビショップを動かすと「はい、チェックメイト」と笑みを浮かべて言った。
黒のキングが立っている場所は、どう足掻いても逃げられない、端。
「私の勝ちですね」
彼女は微笑んだ。
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ゆあ(プロフ) - 雪夜さん» 面白いと言っていただけて嬉しいです! 夢主の正体は明かされるまで時間がかかりそうです……(ただ単に私の執筆スピードが遅いだけの話である) (2016年8月24日 21時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
雪夜(プロフ) - 小説読ませて頂きました。 不思議ちゃんタイプかつミステリアス系女性…いいですね!最近コナンにハマってるのでこういう面白い感じの読みたかったんですよね!お喋り会の会話も面白いwww (2016年8月23日 20時) (レス) id: 9f458a58ad (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 南湖さん» コメントありがとうございます! そうなんです、FBIの方いらっしゃいますよ。私の方も早く登場させたいと思っているところでございます(笑)。 (2016年8月11日 23時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
南湖(プロフ) - ご存知ではありませんでした。夢主の知識量凄い……ところでそこにはFBIもいるんだけれど? (2016年8月11日 20時) (レス) id: 1cca674757 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - *.・赤井 揺芽・.*さん» コメントありがとうございます!三人称は初挑戦になるのに付け加え苦手でもあるのですが、まさかそれについてお褒めのコメントを頂けるとは……!まだまだ経験不足の未熟者ですが、暖かい目で見守っていただけると幸いです (2016年8月9日 0時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
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