第三十五桂 ： 白 ページ38
―――ひどく残酷なおはなしだ。
あまりにも愚かなあまりにも美しい男の
残酷で尊い恋心のはなし。
愛されたものの末路などきっと、誰もがお見通しのくだらない戯曲。
戯曲だと笑い飛ばすもいい、けれどそれを皆がどう感じどう思うかなど
きっと彼らは、そんなことさえお見通しなのだから。
愛されて、愛されて、愛されて
愛されることが当然で愛されることが当たり前の日常で
それがごくありふれた日々でそれに対して対する対象者が
それが当然であり当たり前であると認識しているのならば
―――たとえば一度でも拒絶されたとき
対象者がとる行動はたったのふたつなのだろう。
「信じられない！ 愛してくれないなんてありえない！」
―――もし彼の口からそれが零れてくれたのなら
私はどれだけ救われただろうか。
「ならば、俺に愛されたあ奴は、幸せであろう？」
「・・・み、かづき・・・？」
「愛されるべき俺に愛されて、不幸なものなどおるまい？
なればあ奴は大人しく、そして幸せに！愛されるべきだ！
あ奴は人間なのだ！ 人間は、俺に愛されることが至高なのだから！」
――――あぁ、
「・・三日月、・・」
「そうだ、体調を崩しているのなら、俺が助けてやらねば！
あ奴のことを気に掛ける者などここにはいないのだ、ならば俺が気に掛けてやろう！
あ奴はきっと、今いるあの者どもに愛されることよりも、
ずっと、ずっと救われる！幸せになるのだ、そうだろう、石切丸！」
駄目だ。彼は。
「あぁ、研修生！
早く、早く手を貸してやらねば、俺が、俺が助けてやるからな、」
「三日月、」
「研修生、大丈夫だ、俺が愛してやろう、俺だけが愛してやる。
さすればお主も幸せだ、そうなれば！」
―――彼は、きっともうこわれている。
「 俺を愛してくれるのだろう？ 」
早く、あの子供を、どうにかしなくては。
＊＊＊
目が覚めた時。
扉の前に三日月の姿はなかった。
「・・主・・」
左文字から差し出されたそれを見て、鳥肌がたつ。
白磁の粥だった。
「これは、まさか、・・三日月宗近が・・？」
小狐丸の声は震えていた。
「・・っ・・冗談だろ・・・」
口にするはずがない。
薄暗く漂うものに、俺は全身を震わせた。
「こんな、執着心にまみれた神気ごと、作られた粥なんて」
そしてこの時理解した。
何故、彼女は。就任半年後から突然、三日月に惹かれ始めたのか。
「・・三日月の神気は、中毒を起こす」
白磁の粥は
水におとした。
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
