第十三桂 ： いらだち ページ16
―――己の『城』に訪れる、あらゆる審神者を魅了してきた。
はじめはそんなこと、望みもせずに。
この容姿に勝手に魅了される者たち。
――それはこの本丸の、今の娘も同じ。
自分がこのような容姿だから、
かつてから、そうだったのではないか。
そう諦めて、諦め続けてきた結果。
次第に、それを見るのが楽しくなった。
愚かな人間。笑えるほどすべてがうまくいく。
次はどんな「俺」で魅了してやろうか
諦めを通り越した感情は悪意へと転換された。
今回の標的は近侍が大好きな審神者。
この本丸で、今までの審神者は皆己に魅了された。
ゆえに彼女の存在を排除して、自分が成り代わろうと。
彼らは常に狙っていた。
ぎらつく眼差し。
あたりさわりのない会話で他の刀剣の気を引き、
当のミハナに対してはあらゆるものを捏造し、陥れようとした。
――― 一体何度、それを見て笑いをこらえたか！
そして自分のために悪へとおちていく愚かな人間。
彼らをどん底に突き落とし、
他の刀剣には真実と同時に、
凍りつくような視線をおくらせて
なんと楽しい遊戯だろう！
―――そうして今の囲いの様な本丸が出来た。
それでも政府は諦めない。
さすがに、やりすぎただろうか？
しかし楽しみは増えていく。
今度は随分と、有利な立場から獲物を狙える。
終わるのも早いかと思った。
―――はじめから警戒心だらけのこの本丸で
すべての刀剣が突き刺すような視線と殺気をぶつけるなかで
俺だけはお前の味方だと教えてやろうと、
俺だけが、お前の味方であると刷り込ませてやろうと
どんなに他の刀剣がお前を敵視し、
その命さえ危機にさらされていても、
心優しい俺が傍に居る、と。
そうすればあっさりとこちらへと傾いてくれよう。
そして最後に、――― その瞬間に得られる快楽の為に俺は、
―――そう思っていたのに
「・・狐。そこをどけ。
俺は研修生と話をしたいのだ」
このきつねはなんだ
なぜ、おれのじゃまをする
「悪いがな、三日月。
お主のその目はあまり好かぬ。
この小狐、お主の様な男には、敏感に毛が立つ」
「・・・小狐丸、」
威嚇をされているようだ。
―――この狐は、この研修生審神者の何を気に入ったと言うのか。
その役目は俺でなくてはならない。
敵だらけの地で、俺だけが味方になってやらねば、
―――小狐丸。
たった数日前にきたこの刀に
己の立場を先取りされてしまった。
計画が、瓦解されていく。
三日月宗近は、それが気に喰わなかった。
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
