fire.5 ページ5
焼き切られた遡行軍は塵と化して跡形もなくなった。
敵を切ったあとも刀身の炎は消えない。煌々と辺りを照らし続けていた。
脳の処理が間に合わずにいたが身体は勝手に陸奥守の元へと動き出した。
「吉行…」
「来るな！！！！」
いきなり叫ばれ体がビクッと震えた。
「わしも、っ、わしがどうなるか分からん…主を傷つけとうないきに、そこにおって、待っとうせ…落ち着いたら向かうぜよ…」
地面に刀を突き立て、膝をつき、手のひらをこっちに向けて私を静止させた。
その手のひらから脇腹にかけて、纏うように赤く光っているように見えた。
火傷とも違い、傷跡から血が出ているような赤ではなく、
言うなれば、鉄が高温で焼かれ溶ける時のような光だった。
一歩踏み出した足が動かない、地面に縫いつけられたように、何も出来ないでいた。
本当に動かないままでいいのか、このまま動かないで陸奥守に寄り添わず、それがお前の目指す審神者か、？
あの炎は顕現する時に私の力の調整のミスにより生み出されたかもしれない、陸奥守は自身の身体の違和感には気付いていただろう。それこそ、手を握った時に、
あの時摩っていた手と発光する手は同じ手だ。
そう、自身は普通では無いかもしれないと知った上で、共に戦場に赴き、戦い、声に応えてくれた。
次は私が応える時ではないだろうか。
震える膝を必死に抑え、陸奥守の元へ向かった。
私が近づくと抑えられていた刀身の炎が再び燃え盛る。
「来るなち言うたろうが！！」
「断る！私の刀を、炎なんかに渡さない…！！」
陸奥守の刀を握る手の上に自分の手を重ね、力を注ぎ続けた。
だが、一向に力が伝わるように思えず、刀身に手を伸ばす。
その手を陸奥守の手に掴まれる。離せと言おうと顔を上げると、泣きそうに、苦しそうに、顔を歪ませる陸奥守がいた。
「…主を、切りとうないんじゃ、」
「すまない…」
いつか、そんな顔をしてしまうような過去を教えてくれると願いたい。
気持ちを切り替えて重ねた手にありったけの力を注いでなんとか炎を収めた。そのまま緊張の糸が切れ倒れてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：宵ノ月 | 作成日時：2023年9月28日 6時
