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「ご飯もどうぞ」
サクラが蓋を開けた櫃の中からは眩しいくらい白くて艶のある米だった。こちらも湯気がのぼっている。作ってすぐに持ってきてくれたのだろう。サクラは杓文字で米をよそい、オビトに手渡す。一口食べると、程よい粘りとほんのりとした甘さが口の中で広がった。一口、また一口と米を口へ運ぶ。食事を摂る必要なんて無いと最初は気乗りしなかったはずなのに、何故か箸が進んでしまう。
いつの間にか食べる事に夢中になっているのにハッとしてサクラの方を向くと、彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
「良かった、食べてくれて。一口も食べてくれないんじゃないかってちょっとだけ不安だったから……」
___コイツはリンに少し似ている。外見と性格は似てないものの、何故か一緒にいて安心する。心が……温かくなる。
オビトは味噌汁に微かに映った自分の顔を静かに見つめていた。
「……そろそろ仕事に行かなくちゃ」
そう言ってサクラは櫃と味噌汁を入れていた水筒をカバンに入れて立ち上がった。
「あ、ゆっくり食べて大丈夫。あとでお茶碗は取りに来るんで」
「……ああ」
「それじゃあまた後で」
踵を返し、ヒールの音を響かせるサクラの後ろ姿をオビトは箸を止めたまま、ずっと見つめていた。
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いずな - オビトェ… (2018年11月30日 23時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘ゆら | 作成日時:2018年11月29日 2時