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「オビトさん、おはようございます」
「……ああ」
鎖で繋がれ、牢に監○禁されているオビト。彼はゴツゴツした岩壁に背をもたれて片膝を立てて地面に座っていた。昨日と同じ光景だ。しかし昨日と一つだけ違うのはサクラが片手に大きな風呂敷を持っていることだった。
「……手に持ってるのは何だ」
目敏く、すぐにそれを見つけたオビトはサクラに問う。
「これですか?なんだと思います?」
「知らん」
「ふふふ…」
床に置いてサクラは風呂敷を広げた。
「弁当か…?」
「正解」
サクラは白い歯を見せて笑った。
「昨日ごはん持ってくるって言いましたよね?」
「……要らないって言ったけどな」
まあそんなこと言わずに、とサクラは水筒の蓋を開け、用意してあった茶碗に注いだ。水筒の中の液体はお茶でない。
「味噌汁か?」
「はい。お豆腐とネギ入りです。…どうぞ」
差し出された茶碗をオビトは渋々受け取った。
何故コイツは食べる事にそれほどこだわるのか………。オビトはそんなことを思いながらも茶碗を口に近づけると、立ちのぼる湯気から出汁のいい匂いがした。懐かしい匂いだった。自分がまだ幼く、祖母と一緒に暮らしていた頃の記憶がふと蘇った。
昔の記憶を噛み締めながら、オビトは茶碗に口をつけた。が、数十年ぶりに食べ物を口にしたわけである。一口飲むとむせてしまい、横にいたサクラが慌てて背中をさすった。
「ごめんなさい、しょっぱくし過ぎたかも。私あまり料理が得意じゃなくて」
「……いや、大丈夫だ」
___やはり食べていないと消化器官は衰えるものだな。
今までずっと空っぽだった胃。それが満たされていく感覚は久しぶりであり、少し不思議に感じた。喉から胃へと熱い味噌汁が伝って溜まっていく。体の底からゆっくりと温まっていくのが分かった。
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いずな - オビトェ… (2018年11月30日 23時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘ゆら | 作成日時:2018年11月29日 2時