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じゃあ、私の彼氏になってくれますか?


そう言ったら
あなたはきっと困った顔をするだろう。



夏の終わりの割に風の涼しい夜。

繁華街から一本中に入った道沿いの店の前は
街中の喧騒から少し離れていて静かだ。

オレンジ色の街頭が
私より背の高い健二郎さんの顔を色っぽく照らす。


カッコいいなぁ。
思わず見とれていると
どうしたん?と健二郎さんが笑う。



「Aちゃんは、好きな子おらへんの?」

「えっ」


不意の質問に、一瞬戸惑ってしまった。
反射的に“健二郎さん“と言ってしまいかけたのを慌てて飲み込む。


「います、よ?」

「そうなんや!!」

「片想いですけど」




そう言って
健二郎さんの目を見つめた。

これが私の精一杯。
これで想いに気付かれても気付かれなくても
どっちでもいい。


そう覚悟を決めたけれど
健二郎さんは少しだけばつが悪そうに笑って言った。


「そうか…難しいな、片想いって。

何とかしてやりたいけど
俺に何とか出来るってもんでもないしな」




健二郎さんが
私の気持ちに気付いているのかそうでないのか定かではなかったけれど

彼の言葉から
どちらにせよ
私の恋が成就することはない、ということは明確だった。



わかってたことだ。


密かに想うだけだと何度も言い聞かせてきた。

挨拶が出来ればそれでいい。
多くを望んではいけないと覚悟して
片想いを止めなかったのは私のエゴだ。


同僚として、後輩として
彼の視界に入るだけで満足だと思って今まで来たのに


やっぱり飲み会なんて誘わなければ良かったんだ。

身の程知らずにも
少しだけ期待していた私が大馬鹿者だったんだ。



そんな想いが
どっと頭の中に広がる。


少し前まで見るだけで幸せだった彼の顔が
苦しい。

手を伸ばせば届く距離にいるのに
この人はひどく遠いところにいる人なんだ。



「Aちゃん?」


あぁ、だめだ。

懺悔するのも後悔するのも後にしなきゃ
泣いてしまう。

でも、自分の想いとは裏腹に
頭の中には沢山の自責の言葉が浮かんできて






「Aっ」




泣きそう。

そう思ったとき
後ろから名前を呼ばれた。


振り向くと、街頭に照らされる
よく知った姿。




「隆二!?」

「健ちゃんも。
戻ってこないから皆心配してるよ?」




へへっと笑う隆二の顔。
何となく心のもやもやがほどけていく。



良かった
隆二のお陰で

私は好きな人の前で、乱れずにすむ。

18−隆二→←16



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じゅん(プロフ) - お久しぶりです。更新ありがとうございます! (2021年7月11日 16時) (レス) id: c029804656 (このIDを非表示/違反報告)
ちはる(プロフ) - もう、お話の続き見れないですか?(*´ω`*)わたし、NEEさんの小説も東京も大好きです(*´∀`) (2020年5月13日 10時) (レス) id: 48e30b0c83 (このIDを非表示/違反報告)
amiryu(プロフ) - NEEさんだー ( ̄□ ̄;)!!!・・好きです(///∇///) (2019年8月25日 0時) (レス) id: 536b1e31eb (このIDを非表示/違反報告)
ぽちこ(プロフ) - NEEさん、お帰りなさい!!またツクールに来るのが楽しみになりました★ (2019年8月24日 20時) (レス) id: 1e1bf63da6 (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - いいですっ!こんな同僚2人私も欲しいです((笑))。しかも私が好きな臣ちゃん。そしてカタオモイには健ちゃん…たまりません!これからも楽しみにしています! (2019年8月19日 20時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NEE | 作成日時:2019年8月18日 1時

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