mission 57 ページ7
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「いないよ」
「……へ?」
「恋人。もう作らないって決めてるの」
いても光とずっと一緒だから、安心して?
“もう”という部分に反応して、逆に安心していられない。
過去に恋人作ってトラウマでもできたのかな?とか、色々と気になっちゃうじゃんか!
「あー、あいつのこと思い出しちった。今日はぱーっと飲んでやる!」
「俺飲めないし伊野ちゃんも強くないでしょ」
「いーの!あいつのこと思い出させた光の所為だもん」
ピザでも頼んでよぉ〜。
飲んでもいないのにゆるゆるの声で俺に抱きついてきた。
肩がぁっ!肩が壊れる!
「分かったから!電話するから仕事して!」
「もう終わったんですぅ」
「じゃあ伊野ちゃんがやってよ」
「俺いつものでぇ」
くるっと椅子を回転させてコーヒーカップを洗いに行った。
……いやいや、いつものってなんだし!
ピザなんてそうそう頼まねぇじゃんか!
「光の好きなのでいいって言ってんのぉ〜」
頭固いなぁ、ばーかばーか。←
地味に傷つくんでやめて下さい。
「これでいい?」
「うん……じゃあよろ〜」
携帯で開いたメニューを見せると、手をひらひらさせながら自分の部屋に戻っていった。
「なんだよ、人にやらせといて」
後でドッキリでも仕掛けてやろうか、と考えながら『注文』の文字をタップした。
「伊野ちゃん、現金で良かったよね?」
部屋をノックしようとして、思わず留まった。
伊野ちゃんが話している。電話だろうか。
「光は俺の意志で引き取ったんだ。心配される必要はない」
「……なに、話して、」
聞き耳を立てるつもりはなかったが、どうしても気になってドアに片耳をくっつけた。
「もう縁を切ったって言ってるだろ!病気だってほぼ治ってるんだし」
「……病気?」
「父さんには会わないって言ってんじゃん。いい加減切るよ、圭人」
こっちに向かってくる足音がする。
ヤバい、隠れなきゃ。
「っ……光?」
戻ろうと足を踏み出した瞬間だった。
伊野ちゃんが目を泳がせている。
「あっ!!え、えと、現金払いで良かったかな、って聞こうと思って」
「うん。ありがと」
二人で無言のままリビングに辿り着いた。
こんなに廊下が長いと感じたのは産まれて初めてだ。
「……光」
「っ、ん?」
「本当の親じゃないのに、ありがとね」
その言葉に一瞬、呼吸を忘れた。
動揺して思わず、ピザ取りに行ってくる、と席を立った。
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柊(プロフ) - クリスさん» コメントありがとうございます!亀更新ではありますが、これからも応援していただけると嬉しいです。ぜひ楽しんで下さい! (2021年2月17日 23時) (レス) id: 9a230f5c32 (このIDを非表示/違反報告)
クリス - とっても面白いです!更新頑張ってください! (2021年2月17日 22時) (レス) id: e4548ba768 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 百夢叶さん» コメントありごとうございます!やる気出ました笑 (2020年5月2日 18時) (レス) id: 351dea1b4f (このIDを非表示/違反報告)
百夢叶(プロフ) - 更新待ってます!頑張ってください! (2020年5月2日 17時) (レス) id: 4a44319a0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2020年1月1日 22時