イヴイヴの夜に

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　肩の触れ合うほどに 距離の近い二人。


　一つのお店の中を覗き込み、顔を見合わせて笑ってる。






　私は 目の前が 急に暗くなった。

　その二人以外、目に映らなくなったんだ。



　仲良く話す二人は、とても幸せそうで。
　まるで お互いに お互いしか見えていないかのような うっとりとした表情で。



　二人が ただの友達ではない関係なのは、一目でわかったんだ。









　暫く、その場に佇む私。




　さっきまでの心の温かさはどこへやら、どんどん心が寒くなっていく。



　私は、少し後ずさった。







　見たくないのに、

　視界から消したいのに。



　目が、視線が食いついて、離れない。






どんっ




　後ずさりすぎて、一人の通行人にぶつかった。



「あ、すみま、せん」


　殻からの喉から、声を絞り出す。



　ふと、視線を感じた。












　黒木君が、こちらに気付いてた。














　カッ



　頬が 赤くなるのを、自分でも感じたんだ。



　私は狼狽え、また後ずさってから、背を向けて駆けだした。











「アーヤっ？！」





　黒木君の 声が聞こえる。


　そして、タッタッという、路上を駆けだす音も。







　私は、必死で走った。



　振り返らず、ひたすらに、道を。


　人にぶつかるたび、すみませんと呟きながら。




　振り返ると 即座に追いつかれてしまいそうで、怖かった。


　この 涙だらけの顔を見られてしまいそうで、

　怖かった。






















　正直、何で走ってるのか分からなかったの。


　涙が 頬を あとからあとからと伝う理由さえも。




　黒木君は、同い年とは思えないほどに大人っぽくて。



　…付き合ってる女の子だって、いるに決まっていた。


　でも 今まで そんな影を一つも見たことなかったから。

　知り合いの女性は 皆大人ばかりで、同年代の子なんていなさそうだし、




　私は きっと どこかで安心していたんだ。


　黒木君に近いのは、私だって。



　黒木君に 一番親しいのは、私なんだって。

　私だけなんだって。

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