覚えていて。 ページ10
・
「え?な、なんで泣いてるの」
「へ?…本当だ、泣いてる。…幽霊も泣けるんだねぇ、」
へにゃりと笑いながら、それでも涙を流すA。
そこに手を伸ばしても彼女には触れられなくて、当然涙も拭えない。追い討ちを掛けるように、明るいメロディも白い世界に消えていった。
「なんでだろ…安心したのかなぁ」
「…安心?」
「そう。…真冬くん、音楽まだ好きみたいだし。いつの間にか背も伸びてるし、声は変わんないけど、でも…元気そうで、よかったぁ、っ」
目元をその細い指で擦った君が、ふって笑った。涙はまたぼろぼろとこぼれ落ちた。
「大丈夫、大丈夫だから…泣かないで、」
「…真冬くん、音楽続けてね?前から才能あるって思ってたの」
「うん、続ける」
「…そうだ、白鍵ばっかり使う曲歌ってよ!」
「何、それ…そんなの、いっぱいあるよ」
「うん、多分いっぱいあるね。……真冬くんも、泣きそうになってるよ」
「だって、Aが泣くから」
「ごめんね。」
「…、うん」
「…それは、真冬くんが持ってて?」
「え?」
「プレゼント。持ってて?それで、…私のこと、覚えててね」
「…っ、」
勢いを増した雪に包まれて、融けていくその透明な笑顔は…絶対に忘れられない、本当に綺麗な笑顔だった。
・
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:らぱん( ・×・ ) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=d9fece3f785bc7d3ebaeeecd6103e95f...
作成日時:2019年12月24日 4時