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……
「それで、愛が、なんでしたっけ」
「随分他人行儀だよなあ、きみ。割と傷つくんだが」
「自分以外を一括りにすると全ての人間が赤の他人ですからね」
「ああ、きみはそういう人だったな」
「先程から思っているんですが、あなたは一体私の何を知ると言うんです?」
「教えてやろうか」
図書館を飛び出した私達はどうして近くの有名コーヒーチェーン店にいるのだろうか。ここなら確かに多少騒いでも問題はないけれど。
「以前、主の墓参りに言ったことがあるだろう?」
「ええ、三回ほど」
「桜が咲いていなかったか? もしくは」
__散っていた、ということはなかったか。
彼の言葉に眉を寄せる。桜が散るのを見たのは初めて墓参りに行った時だけだ。それが最初で最後。今思うと、あの時見た白い人は目の前の男だったのかもしれない。
「主がきみを魂として認めたなら、俺はそれに従うだけだ。刀剣男士とはそういうもの。悪く思わないでくれよ__きみは守られる必要があったんだ」
「それが愛だのなんだのと繋がる理由がわかりません」
「そう急かすな。現代っ子はせっかちで困る」
「言い方がおじいちゃんですけど」
現代っ子というならあなたもそうじゃないか、とは言えなかった。彼は器なのだから、歳を取っているのは当然だ。
「そうだな、何から話すべきか。……俺は恐らく、主に恋をしていたんだ。けれど、審神者達が役目を終え、眠りについたことでその感情も薄れた。強制的に心を閉ざされた__いや、そう思っていたと言うべきか」
きみを初めて見た時は驚いたなんでもんじゃあなかった。驚かせるのは俺の得意分野だったんだがなあ、と彼は笑う。
照明の下で絹のような白髪がきらきらと輝いた。純粋に綺麗だと思った。
「最初は主かと思ったさ。眠りから醒めたのかと。でも、きみは違った。同じ名前ではあったが、確かにきみはきみだった。よくわからない生き物と接している気分だったよ。なかなか悪くないが、少しばかりもどかしい」
「手の届く距離にいられるのに、もどかしい?」
「ああ、そうさ。だってきみは、きみ自身は俺という存在を全く知らないだろう? 最初は純粋な興味だった。モノクロの世界が彩られていくような感覚と言えばわかるだろうか。__でも、それだけじゃない」
以前の俺は恋というものを知ってしまっていたからな、どうも上手く自分を制御できずにいた、と彼は続けた。
……
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作者名:木浪 | 作成日時:2020年4月21日 15時