〇18 ページ6
.
それは、
目が離せない瞬間だった。
まるで
ゆっくりと時間をかけて瞬きをするみたいに
世界がスローモーションに見える。
クラス対抗で走る全員リレー。
思わず仲間の転倒で
最語尾になって回ってきた那須先輩の出番。
私が気持ちを込めて結んだハチマキが
風に吹かれながらその時を待っていた。
バトンがその手に渡された時、
真剣な表情にガラッと切り替わる。
スタートダッシュと共に勢いよく舞う砂埃。
瞬く間に、1人…2人と後ろから追い上げて走る姿。
ゴール付近に立つ私は
ただ那須先輩が勝つ事を祈るしかない。
前だけを向いて、一生懸命に走る。
あと1人……追い抜けたら優勝!
勝利の行方に目が離せない。
その時、
向かいから走って来る那須先輩と視線が合った。
『な、那須先輩!頑張れー!』
周りに沢山の人が居るというのに
思わず出た大きな声。
でも今はそんなの気にしてらんない。
『那須先輩!!』
再びその名を呼ぶと、
走るスピードが更に早まった。
グングンと加速していき、
その体は1位に躍り出た。
ゴール!!
那須先輩は、最高な笑顔でゴールテープを切った。
私の高揚した気持ちが、
いてもたっても居られなくて
1位の那須先輩の元へと走った。
『……那須先輩!』
全力を出し切った爽やかな汗。
「良かった、今度はちゃんと…見つけれた笑」
その笑顔は、優勝した喜びからか
ゴールで待つ私が視界に入ったからか
よく分からないほど充分な表情だった。
その姿をみると……
那須先輩の笑顔は……
私を胸をギュッとさせる。
もう私は気づいてしまった。
好きだってことに。
.
148人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ホワイトチョコ | 作成日時:2022年6月20日 21時