幸福論 =4=

Episode.183 ページ41

｢ッチ！キスでうだうだ言ってられんのも今のうちだぜA！！隙だらけのお前を襲って食うのなんか簡単なん｣｢食べるの……？｣


震えた声でそう聞くAを不審に思って見ると、その目はもう涙で決壊寸前だった。ギアッチョは思わずさっきのA同様離れようとしたが、それをAが許さない。いつの間に靴を脱いでいたのか知らないが、ソファの上に両足を乗っけてこちらに飛びかかってきた。


｢ギアッチョォ〜、食べないでぇ〜｣


そう言って号泣しだす。あまりの泣きっぷりに酔いが覚めていき、これは明らかに酔ってるだろと呆れた目で見下ろす。そう言えば、さっきメローネがAに何か飲ましていなと思い出し、ギッと睨む。メローネはクスクス笑いながら瓶をひとつ見せてきた。それは、度数が高めのウィスキーだ。


｢Aって酔うと泣き上戸になるんだな｣


メローネの台詞にクソッと吐き捨て、蹴り飛ばしてやろうと立ち上がる。だがAが腰あたりに抱き着いてきていてうまく動けない。


｢テメェッ！離せ！｣

｢うぇ〜〜ッ！ギアッチョに嫌われたぁぁ！！｣

｢はぁッ？なんでそうなんだよ！！｣

｢いやぁ！いかないでよぉッ！！｣


Aは涙をギアッチョの服に滲ませながら足をバタバタ降って駄々をこねる。今日はワンピースを着ているから、そんなに足を動かすと後ろから丸見えだということすら分からないらしい。こうなれば一旦メローネは後回しにするしかない。元はと言えばアイツのせいなのだが、とにかく今はAを座らせないと色々ヤバい。


｢おい、A！いかねェからまず座れッ！！｣

｢怒ってるぅ〜！やっぱり嫌いなんだぁ〜〜！！！｣

｢違うっつってんだろうがッ！？！！｣


そう言うと更にわんわん泣きじゃくる。それを見てホルマジオとプロシュートが泣かせんなよぉと、笑いながら冷やかしてきてピクピクと顔が引き攣る。クソッ！ムカつくが、まずはAに泣き止んでもらわねェと話しにならん。


｢はぁ。……A｣

｢うぅ…な、なに……？｣


腰に抱き着いてるせいで密着度は普段の比じゃねェし、酔ってるから顔は赤いし涙目だし、それで上目遣いしてんのは誘ってんのかァ！？あ"ぁ！？

……キレるな。キレるとまためんどくせェ。
深く深呼吸をすれば怒りを一時期的に抑えられると前Aに言われたが、それを実践するなら今だ。


｢はぁぁ……とにかく座れ。あと靴も履けよ｣

｢うん……｣

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