文スト劇場 【パート1】

後編 ページ44

｢さァ、着いたぜ｣


ヨコハマから電車を乗り継いで一時間弱。トウキョウに着いた中也。ここで或る重大な事に気が付きました。


｢帽子を被っても見下ろせ無ェじゃねェか｣


然(しか)し、どうする事も出来ないので、取り敢えず目的を果たしに帽子専門店に行きました。


｢いらっしゃーい｣


店員の乱歩さんです。偶(たま)に来るだけの仲ですが、何時の間にか顔見知りになっていました。


｢あ、中原じゃない｣

｢毎度思うけど、何で呼び捨てなンだよ｣

｢まぁ、良いじゃない。……何時ものなら入ってるよ｣

｢あぁ、ありがとう。……それと一つ相談が｣


何も云っていないのに、乱歩さんが奥から厚底の靴を持ってきました。帽子屋なのに？と云う疑問は置いといて頂けると


｢この靴を履いたら父親を見下ろせるよ｣

｢え……｣


名探偵には、相談しなくても問題が判るようです。……今頃ですが


｢ありがとよ｣

｢またのお越しを待ってるよ｣


慣れない靴を履いて帰っていきました。
ドヤ顔をして姿を現す中也。


｢何があったんですか？｣

｢云ッたじゃねェか。見下ろしてやるッて｣

｢上がっておいで。勿論……靴は脱いでね｣


ニッコリとした笑みには、黒いオーラが立ち込めてます。


｢あッ……畜生ッ｣


見下ろせたのも束の間、直ぐ元の背丈に戻りました。こうして中也は何時まで経っても背が高くならないのでした。

お仕舞い

-------------------------------------キリトリ----------------------

此処では初登場な谷崎潤一朗です。
とは云ッても、云う事が無いンで、簡単に終わらせますね。

次回もリクエスト作『人魚姫』です。
坂田葵さん、ありがとうございます。

今回は丸く収まりましたが、次回はどうなるンでしょうか……

それでは、次回もお楽しみに！

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