捕らわれて ページ10
「ベッドはお前が使え。俺はソファーで良い。」
『………え?』
私達は今部屋に入ったところだ。
するとグラジオは真っ先にそう言ってソファーに腰かける。
『グラジオだって、疲れてるんでしょ?いいわよ。私がソファーで寝るわ。あまり気を遣わなくて良いから。』
これは本心だ。
確かにベッドのほうが楽だけれど
グラジオに……私に自由をくれた人に辛い思いだけさせるわけにはいかないから。
『私なんかに気を遣わなくて良いわ。貴女がベッドで寝て?』
するとグラジオは
いきなりソファーから立ち上がり
私にガンガン近付いてくる。
『え、ちょ……何?』
そして私の肩に手を置き
向かい合う形から反対向きにくるりと私を回して、私の背中を少し押したのだった。
『ッァ!』
押されたところがジーンと痛む。
「馬鹿だな。俺が気が付いてないと思ったか。そんだけ背中が見えれば傷痕だって丸見えだ。それに、ビッケから聞いていた。お前はベッドで寝ないと酷く魘されるとな。」
『ビッケ……さんが……。』
「気を使ってるのはお前だ。ビッケは自分には助けを求めてくれないと話していた。…………全く、こんなになるまで我慢するな。」
そう言うとグラジオは
ソファーの方に戻って行ってまた腰かけた。
『だって……誰も……信じられなかったから……。みんな私を……実験のための物として扱ってきた……。私は……ポケモンと会話ができるだけなのに……。貴方たちと違う生活の中で、私は……生きる意味を無くしたのよ……。』
「!……ロサブラ、お前……。」
グラジオはまた立ち上がり
こちらに寄ろうとしたけど
私は無視してベッドに潜りこんだ。
やっぱり貴方に迷惑かけちゃった。
昔から、そうね。気を使わせてばっか。
『ごめんなさい。もう……寝るわ。………おやすみなさい、グラジオ。』
「………あぁ。おやすみ……ロサブラ。」
やっぱり私だけ置いてきぼり。
昔の………子供のままなの。
見た目だけが変わっていって。
大人に見えるように偽られて。
今までが無かったぶん
現在が昔を補っている。
心の余裕も無いほど醜くて
小さくて幼稚で………。
まるで操り人形のようね。
糸が無くなれば機能しなくなる。
まるで今の私のように。
実験体というだけに
動いていたわたしから、実験を奪えば
うまく機能しなくなるのは当然。
私は結局、
今も捕らわれたままなのね……。
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流南涙 - 月海。さん» ルザミーネさん推しのお方でしたらすみません!!!きちんと元に戻りますのでっ! (2018年1月3日 11時) (レス) id: 5d4c5d6413 (このIDを非表示/違反報告)
月海。 - おおう。ルザミーネさん悪役か。何があったらあんな中毒みたいにウルトラビーストに執着するんだろ… (2018年1月1日 4時) (レス) id: b2d559d9e7 (このIDを非表示/違反報告)
流南涙 - 黒猫さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2017年11月26日 8時) (レス) id: 13e460814b (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 更新楽しみに待ってます!ロサブラちゃん頑張ってー! (2017年11月25日 23時) (レス) id: 04cf0d7a4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流南涙 | 作成日時:2017年11月18日 22時