RED ページ3
「そんなこと言わずに、歩きながらでもちょっと話でもしようじゃないか」
そう言って臨也は歩き始めた新羅の隣についた。
「君の話を聴く時間はないんだけどな」
「折角、数少ない友人の1人に会えたっていうのにつれないねぇ、新羅は」
つれない態度をとっている新羅を気にもせず、臨也は話し続けた。
「ねぇ、新羅は赤信号を渡ったことがあるかい?」
「急いでいた時とか車が全然いなかった時とかはあるけど、それがどうしたのかい?」
「新羅みたいに急いでいたから、車がいなかったから、とかそんな理由で赤信号を渡る人間なんて山のようにいるさ。でも、そんな人間のなかでも、俺が気になるのは車も沢山通ってる、飛び出したら間違いなく轢かれてしまうような道を赤信号なのに渡ろうとする人間さ。」
ベラベラと喋り続ける臨也に新羅はもう相槌ですらうっていない。
それでも、臨也は軽快な足取りでくるりと回って口を動かす。
「渡ろうとしたら死ぬか軽くても大怪我をするかもしれないのにそれでも渡ろうと足を踏み出そうともするし、迷って足踏みを繰り返したりもする。どうして、そんな道を渡ろうとするのか周りはきっと理解出来ないだろう….でも、俺は足を踏み出した人間がどんな表情をするのか見てみたいんだ。踏み出した瞬間轢かれて苦痛に歪む顔も、怪我をしながらも渡りきって血まみれのまま笑う顔も…あぁ!!人間とは本当に面白い!!全員がまるで違う顔をする!!体裁も思考も善悪も全部全部取り払った人間がする表情!!!素晴らしい!!まさに、これぞ人間!俺はそんな人間が大好きだ!!愛してる!!」
もう周りの目線など気になど気にしていない。
寧ろ、そんな不審者を見るような表情ですら愛してると言える。
高らかに笑う臨也の側に新羅の姿はもうない。
自分の世界に入り込んだ臨也に対し、早々に見切りをつけてさっさとご飯を食べに行ったのだ。
だが、新羅がいた事などもう忘れた。
何故なら今、目の前にある信号の向こう側、熱気のせいで陽炎のように揺れる道の上にいるのは、この世で最も嫌いな化け物。
赤信号を渡っても車に轢かれるどころか、跳ね返し傷一つ受けることなく歩き続ける。
人間の摂理も何もかも跳ね除けて歩き続ける化け物がいる事は我慢出来ない、消えるべきなのだ。
揺れる陽炎、向かい合う2人、立ち込める息苦しいほどの都会の空気……
「本当に死んでよ…シズちゃん…」
狂ったように点灯し続ける赤信号の先には何が見える………?
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作者名:VALGUS | 作成日時:2016年4月4日 18時