第五訓 ページ8
「氏名は土方十四郎です」
その声は、エコーがかかったかのように、脳内で再生された。
……。
鬼の副長じゃねぇかァァァァァ!
「どうかしました?」
明らかに不信感をはらんだ声に、私の意識は現実に引き戻された。
「あ、いえ……」
適当に応えて電話を切った。
……正直、何を言ったか覚えていない。
*
ついにこの時が来た。
玄関から戸を開く音が聞こえ、私は身を強張らせる。
だがな……私はもう覚悟を決めている!
金を巻き上げてやるぜ、うへへへへ。
そんな、冷静な自分にドン引きされそうな言葉を自分に言い聞かせて、無理やり表情筋を動かす。
「土方十四郎さんですねー! 此方にお入りください」
「はい」と土方が患者用の椅子に座ったのを確認すると、私は早速診察を開始した。
「今日は……その腕ですね?」
私は包帯が雑にぐるぐる巻かれている右腕を指さした。
「あぁ。攘夷浪士どもに不覚をとっちまいまして……」
「あーそれは大変でしたね。攘夷浪士って、やはり貴方真選組の土方さん? 名前聞いたときにあれ、って思ったんですよー」
さも今気付いたかのように振舞う。そして私は土方に傷を付けた攘夷浪士にナイスとテレパシーを送った。……テレパシー使えねぇけど。
「応急処置は出来てるみたいですね。ひとまずは安心ですが、一応レントゲンは撮っておきましょう」
これは別に親切心じゃない。
レントゲン使えば、それを理由に診察代ちょっと高くできんだよ。うひひ。
「こちらへどうぞ」
「あーはい」
黒すぎて、もうまっくろくろすけな私の考えに気付かず、土方はのこのことついてくる。
ところで、読者の皆さんは、もしかしたらこの医院にはレントゲンなんか買う金あんの?と心配しているのではなかろーか。
ふっ。バカにしちゃあいけないぜ。私は医者だ。レントゲンが無かったら殆どやっていけねぇ。
……まぁ、この医院、潰れた廃院引き取ったやつだから元々付いてたんだけど。
撮れたレントゲンを見ると、まあ見事にひびが入っていた。
ただ残念なことに、固定さえすれば直ぐにくっ付いてしまうだろう。
再び患者用の椅子に着いた土方に、私は不詳の度合いを説明した。
……安心されるのも癪だから、ちょっぴり盛って伝えたけどな。ひひひ。ビビってら。
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レイレイン(プロフ) - ふわもちねこさん» 亀更新申し訳ない……有難うございます!モチベになります笑 (2022年10月2日 11時) (レス) @page17 id: 2b86b63c91 (このIDを非表示/違反報告)
ふわもちねこ(プロフ) - 続きがない…だと…!? めっちゃおもしろいです続き待ってます! (2022年10月2日 3時) (レス) @page17 id: 8da5ac43aa (このIDを非表示/違反報告)
レイレイン(プロフ) - きゃあ〜!有難うございます!うれじいでず! (2022年8月2日 17時) (レス) id: 2b86b63c91 (このIDを非表示/違反報告)
まつたけ - この小説最高すぎだろ! (2022年8月2日 15時) (レス) id: 796715c198 (このIDを非表示/違反報告)
レイレイン(プロフ) - ちょ、そんなこと言われたら私、朝も昼も眠れなくなっちゃうじゃないですか…ッ!私がそんなお言葉頂ける日が来るとは思ってもみなかったです。有難うございます!頑張ります! (2022年5月20日 15時) (レス) id: 2b86b63c91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイレイン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/
作成日時:2021年4月2日 11時