命懸けの決闘 ページ29
・
遡ること三日前。
とても心地の良い午後だった。空は穏やかな晴天で秋の風が木々の葉を揺らし、鳥の羽ばたきが枝を鳴らす。青々とした芝生の広がる校庭は景色のみを切り取ってもそれなりに価値のあるものだが、この日はより一層目を引くものがあった。
学園長や生徒、ゴーストたちが遠巻きに見守る中、二人の人物が対峙している。一人はマレウス、もう一人は……Aだ。
「マレウス・ドラコニアとAが決闘するってマジだったの！？」
「Aの奴、死にたいのか！？」
事の発端は前日の放課後。マレウスと三人のディアソムニア寮生、Aと三人のサバナクロー寮生がメインストリートで鉢合わせてしまったことが全ての始まりだった。
何も言えず睨むサバナクロー寮生に対し、マレウスは『真っ向から挑んでも勝ち目はない』という意味合いの言葉を告げた。マレウスに悪気はなく、本人からすれば客観的な事実を口にしただけのつもりだった。彼は人間との接し方を十分に分かってはいなかったのだ。
だが、悪意がなければ何を言ってもいいわけではない。マレウスの言葉はサバナクロー生たちの心に巣食う憎悪を掻き立て、おまけにディアソムニア寮生たちは揃ってマレウスを援護し、『全肯定することが愛』と言わんばかりの盲信加減がさらにAや彼らの怒りに拍車をかけた。
気がつけばAは決闘を持ちかけていた。もし自分が勝てたら人間の全てが弱いわけではないことを認めてもらう、と。
そして当日。
鏡の割れる音と共に、両者はぶつかり合った。マレウスの魔法、Aの呪いが剣のように火花を散らし、空気すらも殺伐としたものに変えていく。
マレウスは……苦戦していた。かつてここまで彼を追い詰めた人間がいただろうか。答えは否。
驚愕と焦燥が彼の理性を霧の如く覆い、目を刺すほどの電光が放たれる。轟音と共に地は揺れ、土埃が見物人の視界を遮る。
視界が晴れた時、グラウンドは土の岩場と化していた。ところどころが歪に割れ、樹木のように枝分かれしたひびが寮生たちの足元にまで及んでいる。
Aは立ち上がった。だが、瞳は光を失っている。半ば意識を失いながらも、その目はマレウスを睨みつけていた。
「そこまで！」
学園長が制止をかける。そうしなければどちらかが死ぬまで続いていたに違いなかった。
こうして引き分けという形に終わったが、両者の間のわだかまりは解消されることはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 294人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リー・マキトータ(プロフ) - 珠梨さん» 大爆笑しました🤣 ちなみに読みは『エウシーダ』で、二つのスワヒリ語を合体させた造語です。 (4月1日 14時) (
レス) id: 042fe54ac4 (このIDを非表示/違反報告)
珠梨(プロフ) - タイトルを入試だ☆と読んでしまった自分は…… (4月1日 14時) (レス) @page2 id: ac62a72ef1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リー・マキトーマ | 作成日時：2020年2月28日 9時
