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+76+香染 ページ29

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少し視線を落とし、それでも間髪入れずにそのまま口を開いた。



『…山本くんも、あまり私に関わるのはオススメしませんよ。』



伝えたのは遠回しな拒絶。


人が良すぎるからこそ、彼等が事件を知ったら
優しさゆえに私に気を遣うだろう。


…それは、私には苦痛だとしても、だ。


自覚してきている。
私が彼らの人の良さに当てられていること。

だからこそ、彼らの善意で私が勝手に卑屈になることなど
あってはいけないと思うし、そうありたくない。



恭弥さん以外では初めてではないかというくらい
他者の輪に少しだけ踏み込んだ位置で彼らを見ていた。


そこは彼らの輪の中、というよりは輪のすぐ側

手を伸ばせば届いてしまうような位置で
時々、誰かが私の方に腕を伸ばし引っ張りこんでくれたりもした


いつもいつも賑やかで苦労なさってる沢田くんだが
彼を中心にできた輪は明るく、彼らの人生において尊いものだと思う。

その素敵な輪の魅力に気付いた。

本当に…嘘偽りなく『入りたい』など思っていない。
が、彼らの(それ)は侵されるべきものでは無いと思っている


故に、少し前と同じように彼らは私にとっての景色であって欲しい。


我ながらなんとも難儀な性格をしていると思う。
他人の善意や善行が苦痛に感じるなんて…面倒な人間だ。



『私は、恭弥さんと居られれば大丈夫なんです。
皆さんは善意で仲良くして下さっているのは分かっています。
ですが、不要なんです。

…私は自身が「クラ子」であることが楽だったんです。
皆さんのように誰かと繋がり肩を組んで生きていく…
そういう共存、という生き方には向いていないんです。

だから……。』



何故か、自分でも驚くくらいに言葉がポンポン口から出ていく。
自分は、こんなにも饒舌に喋れたのか。
そう思ってしまうくらい勝手に口が回っていく。


あの面々の中でも一番気を使って下さっていた山本くん。
…そんな人にこうも拒絶の言葉を並べて彼の顔が見られない

傷付けたくないから忘れて欲しいとまで思っておいて
結局その果てに出した答え、その言葉がこれか。




まぁ、流石に。


善意で接していただけの私にここまで言われれば
明るく、獄寺さんには能天気とまで言われる彼も呆れることだろう


視線を下げていたため少し伏せていた瞼を一度完全に閉じた。




だが、頬に少し冷えた何かが添えられて上を向かされる。


驚いて反射的に目を開ければ、あの香染(こうぞめ)の瞳が。

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作者名:睡-スイ- | 作者ホームページ:https://twitter.com/sleep_d_urtk?s=09  
作成日時:2019年9月23日 16時

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