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迷いながら前を向き直すと、懐中電灯の光が何かをとらえる。


「?」


さっきは気づかなかったが、壁際に何かある。

何の気無しに、歩み寄った。


「!?……何これ」


壁の両脇に一人ずつ、二人の人間が向かい合って座り込んでいる。

膝を抱え深くうなだれた首には、赤いロープが巻かれていた。

それは緩やかに垂れ下がって、二人を結びつけている。


私は呆然とそれを見つめていた。

これは……何?



懐中電灯に浮かび上がる二つの人影。

それが紛れもなく本物のヒトだと分かった時、悲鳴をあげて身を翻す。

足がもつれて何度も転がった。



懐中電灯が放り出されガシャンという嫌な音がした。それを気にしている余裕はない。

パジャマを泥だらけにしながら、必死に地下道を駆け戻った。

短い階段を駆け上がる。

早く外へ!


私はドアに飛びついた。


「!?」


ドアを開けようとして、驚愕。

ない……、こっち側にはドアノブがない!!



鉄のドアは鉄の壁と化していた。

とりすがる場所さえない。


両手を強く押し付けてなんとかスライドさせようとしてみたけど、鉄の板はびくともしない。

動かない!そんな!!




焦りと混乱の中で、必死に鉄の扉を引っ掻きながら思い出す。

開けておいたはずなのに!!

ちゃんと押さえておかなかったから、ゆっくり閉まったのかもしれない。

だけどーー


「!……開かない!どうしよう!!」


扉を拳で叩いた。


「アーウィン、起きて!!ここを開けて!ねえ、アーウィン起きて!!……誰か!!」


家にはアーウィン以外誰もいないこと知っていながら、声の限り叫ぶ。


「誰かここを開けてーー!!」





あれからどれくらい経ったのだろうか。

鼻をすすり上げた。


ドアを叩き続けた手は、小指側の側面が赤くなってしまっている。

どれだけ叫んで叩いても、彼が来てくれる気配はない。

当たり前よね、寝てるはずだもの。



鉄の引き戸は思ったより分厚くて、叩いても大きな音が出ない。

声だって、アーウィンの部屋まで届いていないだろう。



振り返り、長く伸びる地下道を見つめた。


「…………」


もしかしたら他に出口があるのかもしれない。

ぎゅっとパジャマの裾を握った。



大丈夫よ……朝になってベッドにいなかったら、アーウィンが捜しに来てくれるもの。

大丈夫……。



私は立ち上がる。

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作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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作者名:蒼(そう) | 作成日時:2023年11月25日 22時

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