炎の狂った愛を受け止めて。弐

ろくじゅうさん＊ ページ13

温かい。優しく包み込まれて、頭を撫でてくれるその手は優しくて。
ギュッと抱きつくと、温かい気持ちになる。



心地が良くて、大好きな匂い。
鼻をスンスンと押し付けて。

杏寿郎さんかな。
まだ少し眠たくて、上手く瞼が開かない。





でも、これは杏寿郎さん。分かる。





「A」






呼んでくれるのが嬉しくて。
また擦り寄ると、笑い声が聞こえてくる。



「困った、妻が可愛すぎて動けないな。ははっ」



動けない！？
起きないと……


寝惚けている頭を必死に動かして、瞼を開ける。





明るい光が入ってきて、目を細める。



「おはよう、A」



目元を優しく撫でられる。




「……おはようございます……もう朝…」
「いや、まだ夜だ。明るいのは電気だな。寝惚けているな。まだ寝たいか？」
「ん……」



ダラりと杏寿郎さんに倒れかかってまた瞼が閉じそうになる。



「そうか、そうか、ゆっくりお休み。風呂には俺が入れてあげるからな」
「！！？」



それは恥ずかしい！！
私は急いで起き上がる。睡魔に打ち勝つことができた。



「A、まだ寝ていていい。おいで」



腕を広げてくれるが、私は首を横に降る。



「杏寿郎さんの負担になりますし！！大丈夫です！」
「そうか、なら今から一緒に入るぞ」
「え」



あっという間に抱き上げられる。
そこで自分の服装に気が付いた。


ほぼ下着姿だった。
そっと腕などで隠すと笑われた。



「今更、だぞ？A」
「……最近本当に旅行太りしたので、そのお風呂別々に……」
「ダメだ。君はそんな事気にする必要はない。俺が抱き上げられているんだ！！気にするな！」



いや、杏寿郎さんはとんでもない身体能力の持ち主なのは分かっている。一般人の身体能力とは天と地の差ほどあるぐらいなのに。
そんなの全然フォローにならないよ。



「それに、君は今日は沢山運動して努力した。それでいい。俺は努力するAを更に好きになったぞ？」
「っ！」




ずるい、杏寿郎さんは本当にずるい。
そんな優しくて、温かい言葉かけられたら、なぜか大して泣くような内容でもないのに、嬉しさで心がいっぱいいっぱいになって涙が出てしまう。




「A！！？すまない！！傷付けてしまったか！？無神経な事を言ってしまっただろうか！！？」



先程まで余裕たっぷりだったのに、私が泣けばこんなにも動揺して。
本当に愛おしい人。


杏寿郎さんの首に腕を回しておもいっきり、口付けた。

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