炎の狂った愛を受け止めて。弐

ろくじゅうよん＊ ページ14

「んっ、どうした……？A」


何度か重ね合った後、私の唇を優しく親指で拭きながら聞いてくる。
そして、ゆっくり洗面所について、私を下ろす。



「君の泣いている理由が知りたい。理由が分からず君に泣かれると狂いそうだ」



しっかりと見つめられて、溢れる涙は優しく拭かれる。

泣いている理由……


「……杏寿郎さんは罪な人です……」
「む？」


怖い時もあるけど、とことん甘やかして、私をダメにさせて。
それでも愛おしい目で私を見て、さらに甘やかして。


蜂蜜漬けにされた人間になったみたいだ。



杏寿郎さんの言葉だけが嬉しくなって。
杏寿郎さんに触れられたら堪らなく心が舞い上がって。
杏寿郎さんの言葉一つで泣いて。



杏寿郎さんに溺れてる。





杏寿郎さん無しじゃ、





＿＿＿＿＿生きていけなさそう





少し怖いけど、怖いけど、
本当に私は、杏寿郎さんなしじゃ……





「杏寿郎さんの言葉一つで胸がいっぱいいっぱいになっちゃうんです」




彼の瞳が大きく見開き、私は見逃さなかった。
彼の口角が一瞬上がった。



だけどすぐに、眉を下げて、心配そうに私を見つめる。




「そうか、そうか……それはすまない。これからは十分気を付けよう」
「……っはい」
「だが、嬉しい…泣いている理由が俺の言葉で胸がいっぱいになっていたから、だなんてな」




背中のホックに手を伸ばされ、外される。
一個、一個丁寧に。


その間は私が手を出したら杏寿郎さんは怒る。だけど、やっぱり脱がしてもらうのは恥ずかしい。




「まだ、旅行の痕が残っているな」



そっと広がる痕に指を滑らせられ、少し体が跳ねる。
くすぐったい。



「こっちも、ここも……君を沢山愛した痕だな」
「…」



恥ずかしくて顔を逸らせば、頬にそっと手を添えられて、杏寿郎さんの方を向かされる。



「大丈夫、恥ずかしいことでは無い。君は俺のもので、俺は君のものなんだから。何も恥ずかしくない、大丈夫、恥ずかしくない」
「っ……」



洗脳するように、優しく何度も言う杏寿郎さん。



「ほら、A、綺麗だ。とっても綺麗だ」





はらりはらりと、下着が床に落ちていく。




「今日も沢山君を愛したい。ダメだろうか……？」



ワイシャツを脱ぎながらそう言ってくる。
私は目線を杏寿郎さんの髪にして、小さく首を横に振った。





「ダメじゃないです……私も、愛してますから」



腕を引かれ、私達は風呂に入った。

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