95 ページ9
*
｢待て｣
聞きなれた低くて少し甘い声
その声に呼ばれると、従ってしまうのだ
ぎぎぎ、と音がしそうならい不自然なターンをして『零似の人』と目を合わせる
｢はぁ、やはり最初は受け入れ難いか…Aならどんな我輩でも受け入れてくれると思ったのだがのぅ……｣
しょぼんとして指をつんつん合わせているこの人は風貌こそ零のものだが仕草、言葉遣い、纏う雰囲気の全てが違う
『いやっあの、疑ってるとかそういう訳ではないんですけど』
自分で言っててわかりやすい嘘すぎる
事実、疑っているから仕方がない
｢じゃあ、これを見ても本人だと信じられないかの？｣
いそいそと棺桶の中から取り出したのは一冊のノート
表紙には私の書いた字がある
あの時に、ぎゅっと握りしめていたから、しわがよってしまっているノートだ
なくしてしまったと思っていたのに
｢おぬしが命をかけて守ったノートに違いないじゃろ？｣
こくん、と頷いて見せれば微笑みをうかべたあと、すぐ険しい顔つきをする
｢こんなノートのためにそこまでしなくてもいいじゃね〜か｣
聞きたかったいつもの零の口調は、思わぬ形で聞くことになった
カッとなって言い返す
『こんなノートなんて言わないで！私にとっては零との思い出が沢山詰まったノートなの！私の知ってる零はこんな人じゃない、帰る！』
悲しかった
なんだかんだ言いながら書き続けた交換日記は、私の想いが詰まってるものだったし、零の色々な一面を知れた大切なものなのに
くるっと背を向けてドアを目指す
背を向けた瞬間涙が溢れてきた
外から鍵をかけられていることを途中で思い出したが、それでも泣き顔を見られないことが最優先だった
｢だから待てって｣
掴まれた手首はひんやりしてて、知っている体温だった
ああ、この人は本当に零なのだな、と思ってさらに悲しくなった
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 684人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鏡花(プロフ) - 何度も見返しにきています (4月17日 11時) (
レス) @page15 id: 1242228826 (このIDを非表示/違反報告)
名無し31891号(プロフ) - 何この最高な作品…Amazing…☆ (8月30日 23時) (レス) @page20 id: d2e76c8443 (このIDを非表示/違反報告)
えご(プロフ) - また見返しにきちゃいました！やっぱり何度見ても素敵なお話でキュンキュンしました…！ずっと大好きな作品です！ (2020年11月6日 2時) (レス) id: c8fffc6825 (このIDを非表示/違反報告)
。 - めっちゃくっちゃおもしろい！続き待ってます (2020年5月23日 14時) (レス) id: f020a3770c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆちゃん(プロフ) - ぶらっきーちゃんさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！拙い文章ではありますがこれからも頑張ります…！ (2019年11月28日 19時) (レス) id: 0723d5fa52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆゆちゃん | 作成日時：2019年9月16日 10時
