Valkyrieの強火オタクが魔王様と距離ができる話

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宗のステージが終わるのと、渉が客席に戻ってくるのはほぼ同時だった




わたる〜、かわいかったですよ〜
ししょ〜の演技は天下一品だネ




少しでも暗い雰囲気を盛り上げようとする仲間たちの賞賛をあびて席に着く彼は、友の処刑を盛り上げる前座を務めあげた





『おつかれさん、渉』


｢ありがとうございます、零｣



悲しみや苦しみを一切滲ませずに朗らかに答える友が今ばかりはすこしの救いに思われた



『今日のシンデレラ、いつもと話が違うな』



渉が演じるシンデレラは何回見たかわからない
そのどれもが、一般的な物語のシンデレラ



今日、渉が演じたシンデレラは、



｢王子様に見つけてもらえず、継母に閉じ込められたまま一生を終える、ああ、可哀想な灰被り！たまにはバッドエンドも演じないとですからね｣



嬉嬉として答える渉だが、なぜ今日この日にわざわざそのシナリオにしたのだろうか

宗もきっとその悪趣味さに顔をしかめたことだろう



｢零、やはり物語はハッピーエンドに限るとは思いませんか？｣






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____講堂の扉付近の女性、今から出ていこうとしていますね




ちらっと振り返れば渉の言う通り、重厚な扉を開けようとしている人物




見間違えるはずがない




｢ああっ彼女もまた、王子に見つけてもらえない哀れなプリンセス！悲しい結末はもう懲り懲りです！｣






芝居がかって言うこの友が言わんとしているところを察せないほど子供でも無い




『悪ぃ、いってくる』




こんなに走ったのは、いつぶりだろうか








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