何度廻っても、俺はお前を愛してる【う ら た ぬ き】

と ページ4

俺の名前はうらたぬき。年齢はかれこれ200歳とか……？
一応、こう見えて吸血鬼の王様のご子息様である。
吸血鬼は200歳で成人とみなされ、とある儀式をクリアすれば不老不死となる。
その儀式の内容は……

　
『人間世界で愛する女性を見つけ、その血を吸うこと。』

　
何とも滑稽な儀式である。
人間に対して、愛だの恋だのそんな感情は持ったことがなかった。
というか、吸血鬼に対してもそんな感情もったことない。
人間は食料である。ただ、それだけなはずなのに。


　
「なんで、俺の脳内にはあの女がいるんだ……」


　
Aという女。
道楽で子供に化け、次のターゲットを探しに村に降りたところ
村の人間どもから自分たちと身なりが違うから化け物だと罵られ殴られ蹴られ傷だらけの俺を
なにも疑わずに家に招き入れ、手当てしようした純粋な人間。


　
ご丁寧に俺に会いに来たもんだから、その血を吸ってやろうと思ったのに
何故か吸えなかった。その後も吸おうと思って何回もAの家に行ったのに
吸えなかった。なんでかわからないけど。

　

「なんなんだよ……」


　
胸がざわつく。今まで感じたことのない感情。
それに、抱きしめたときの香りもすべて鮮明に覚えている。
俺だけのモノにしたい、例えるならそんな気持ちなんだろうか…いや、それだけじゃない……

　

「くっそ……」

　
色々なものに当たっていると、写真が倒れた。
両親と弟の4人で撮られているその写真をみて、幼い時に母親と話したことを思い出した。

　
「ねぇ、おかーさん。誰かを好きになるって、愛するってどうゆうこと？」

「あらあら、どうしたの？そんな言葉を覚えちゃって…」

「おとーさんが言ってたんだ。吸血鬼は成人の儀式で愛する人の血を吸わないといけないって。」

「あの人もこんなに幼い時からそんなこと教えなくてもいいのに…」

「ねぇねぇ、どうゆうこと？」

「ふふ、こればかりはお母さんでも教えられないわねぇ…」

「えー！！」

「でも、誰かを好きになるといないのにその人のことを考えたり自分のモノにしたいって
　うらたもそう思うはずよ。そして、その人を大切にしたいと思うようになるわ。」

「大切…？」

「死んでほしくないって思うようになるってことよ。」

「ふぅん……」


　
その時、母親は教えてくれなかった。
『吸血鬼に血を吸われた人間は死 ぬか吸血鬼になる』ということを。
何ともまぁ、矛盾した儀式だ。愛した人をこの手で殺 めるなど。


　

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