何度廻っても、俺はお前を愛してる【う ら た ぬ き】

ま ページ5

「俺は……あいつを………」


　
考えすぎてきりがないから、いったん外の空気を吸おう。
そう思って窓を開け、のどが渇いたからと森に向かって飛び立つ。
適当に獣を見つけては仕留め、その血を吸っていく。

　
「まっず……最近血飲んでねぇしなぁ……獣ってのもあるけど…」

　
吸血鬼は何の血液でも大丈夫と言えば大丈夫だが
人間と獣とじゃそもそもおいしさが違う。
村まで行って人間から血をもらってもよかったのだが、なぜか行きたくなかった。
もし、Aにあったら。吸っているところを見られたら…
そう思うとなぜか行きたくなくなったのである。
吸血を終えると、近くで2人の若い吸血鬼が何やら話をしている様子が見えた。

　

「ねぇ、僕さこの前村に出たときいい女見つけたんよ。」

「マジで？どんな？」

「まだ若くてな、茶色い髪で血色もええし…目なんて血みたいに赤いんよ！」

　

その言葉が聞こえた瞬間に俺は気配を消してそいつらの背後に近づく。
赤い瞳、彼女はその瞳を嫌っていた。俺は大好きだが。
村では彼女だけが瞳が赤くその為に部外者として見られるという。
人間とは自分と違うだけでそんなことをするのかと怒りを覚えたものだ。


　
「明日は満月やし……一緒に行かへん？」

「えぇな！行っちゃおか！！」


　
…こいつら、今ここで始末してやろうか。
アイツは俺だけのものだ、そもそもお前らに血を吸わせたくない。
ただ、始末するのは簡単だが…あとが色々と面倒だ。


　
「俺が、あいつを守ればいいだけか……は、守る…？」

　
　
何もためらいなく、口からこぼれた守るという言葉。
そうか、これが大切にしているということなのか……
そうなると、俺は……俺はやっぱり……


　
「アイツのことが好きってわけか……」


　
明日は満月。その言葉が懸念材料だが……
見上げた空は曇っていて月は隠れている。
明日もこんな状態ならば…大丈夫だろう。
最近ただでさえ、人間の血を飲んでいないから…抑えられるかどうか。

　
「でも、行かなかったらアイツの血が吸われんだろ…？無理、マジ無理。」

　
行くことは確定である、脳裏には儀式がちらつくが…

　
「あいつから血を吸わないといけない……ねぇ。」


　
ひとまず儀式については置いておこう。
明日、あの若い吸血鬼たちから彼女を守ることが最優先だ。
自分より先に、手を出されては、血を吸われては…

　
　
　
「そんなの、絶対嫌だかんな。」

　

　
うらたぬきSide 終わり

た→←と

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