【歌い手】僕だけの、放課後せんせー【ｍ.ｆ.ｍ.ｆ】

ろく ページ6

『音楽かぁ……すごいね。かっこいい』

「まあ周りの人には無理だ〜とか、色々言われてるんだけどね」

『確かに大変かもしんないけど、そんなのやってみなきゃわかんないじゃん』


かち、かち、かち。
まふが手に持ったシャーペンをノックする。


『にしても、音楽か』

「Aも難しいと思う、？」


いつもよりだいぶ控えめな声。
私の表情を伺うような、探りをいれるような。


『さっき、“自分の声と言葉で”って言ってたでしょ？』

「うん」

『まふ、現文も古文も漢文も苦手じゃん』

「そ、そうだね」

『…国語、強化しよっか』

「マジかぁぁぁ…」


でろーん、と効果音がつきそうな感じで机にもたれかかるまふ。

まふは、理系ってわけじゃない。
ただ、唯一国語だけがそこそこ悪い。

一応平均点以上は取れてるみたいだけど。
それでも成績は良いに越したことはないだろうし。


『よし、じゃあ今日はもう帰ろ。明日からはとりあえず古文しよ？』

「はぁい…」

『数学はだいぶ解けるようになったでしょ？』

「それはもう感謝しきれないくらいスラスラ解けるよ」

『良かった』


くっつけていた机を戻して、教材を片付ける。

いつもこれをするときは、少しだけ名残惜しい感じがする。
もう少しだけ、一緒にいたかったな、って。


「あ、もうこんな時間」

『ほんとだ。完全下校時刻じゃん』

「遅いし、送ってくよ」

『ん、ありがと』


まふは、優しいから。
勘違いしちゃいそうになる。

誰にでも優しいってこと、知ってるはずなのに。

それでもやっぱり、優しくしてくれる度にすきだなって思う。
けど、伝えちゃうときっとまふを困らせてしまうから。
その優しさでまふと気まずくなるくらいなら、今のままがいい。

異性としての一番じゃなくって、女友達の一番で。


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