裏表スイッチ【あんスタ】【悪女】

おもて？ ページ16

*‥





久しぶりにみた。
さっきの夢を、まだ少しだけ覚えてる。



時間が経つたび、忘れてしまうのだけれど。






目を覚ましたのは、肩に何かが乗っかる気配がしたから。

ゆっくり目を開けたのは、なにが乗ったのか気になる好奇心から。


それは、分かっている。


…目の前にいずみん先輩や、もりっち先輩がいるのは、どうして？？







＿＿わから、ない。








『…どう、して』




徐々に記憶が戻ってくる。

そうだ、古林弥生に閉じ込められて、
ちょっと心細くて、寝て。


そこで、気付く。

ダメだ、今は“裏”の時じゃない。



だめ、だめ、だめ……。




いま、わたしが。

愛に貪欲で、薄汚くて、
汚れてる人間だと知られたら、だめ。




そんなの、引かれてしまうに決まってる。
…愛されなく、なっちゃうに決まってる。





『あははっ…☆
わたし、変なとこで寝てましたね！！！

ていうかいずみん先輩ともりっち先輩はなんでここにいるんですか！？YOUは何しにここへ？！』




精いっぱいおちゃらける。

わたしが今できるのはそれくらいってこと。
知ってる。

今さらおちゃらけたって、もう無意味なことも、知ってる。






「……もう、いいよ」






その言葉は、何よりも心の奥底に突き刺さった。
呆れられた。

見捨てられる。


もう、愛されない。







「…A」




『なっ、なんですかっ？！
いまシリアスな雰囲気ですか？！

ざんねんっ、私にはそんなこと効かな』



もりっち先輩は、
わたしの方をつかんで、心の奥から嘆いた。


「…ッ、泣かなくて、いいぞ…！
辛いなら、やめろ…！

その“キャラ”が、お前自身の首を絞めているなら、その“キャラ”は捨ててくれ…！！


俺は、もうお前に苦しい思いをさせたくない…」





もりっち先輩は、まるで酸素がないように、苦しそうに顔を歪めた。





泣いている？

＿＿＿＿..泣いて、いる。


“表”が、わたしを苦しめている？？


＿＿＿＿..苦しめて、いるよ。







「別に、あんたがいつものキャラじゃなくたって」




いずみん先輩は続ける。




＿＿俺は、A自身が好きだから。









＿＿だから、絶対嫌ったりしない。







その言葉には、なぜか説得力が籠っていて
何かのたかが外れたように、私はもっと沢山の涙を流した。





“おもて”だけが、好かれてるわけじゃない。





その事実に、私は安堵の涙をこぼした。






○＊・○○

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