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辻村の憂鬱22 ページ32

後日、特務課から井戸の事件解決が依頼された。
私がその井戸の記事を書いた記者に聞き込み調査をして帰ると、Aさんがパタパタと働いていた。
大きな姿見を二枚合せ鏡にし、その間に水で満たしたたらいをセットしている。何故か手元に拳銃を用意し、地図をよく見えるように壁に貼っていた。


辻「ちょ、何してるんですか?何処からその拳銃を」
A「準備」
辻「何のです……………?」


今日は綾辻先生と井戸の捜査に行くのだ。
Aさんが来ても別に構わないと伝えたにもかかわらずAさんは手を止めない。
セットが終わったのか立ち上がって先生にコクリと頷いた。


綾「ご苦労だったな。そろそろ出る」
辻「Aさんは何をしていたんですか?付いてきて頂いても構いませんけど」
綾「君の仕事を少しでも減らしてやろうというAの配慮だ。Aは異能者だが直接戦闘に長けるわけじゃない。万が一の場合脱出手段としてAが事務所にいた方がいい。辻村君も危なくなったら鏡面に飛び込むんだな」


なるほど。
戦闘となりAさんが拐われたり殺害された場合私達は脱出手段を失う。だがこの事務所であれば今までの倍の監視のもとにある。言ってしまえば一番安全な場所だ。
ぽつりとAさんが呟いた。


A「井戸は冥界の入り口だから」
綾「ああ。井戸は実にあいつ好みだ」


二人が言うことがよく分からなかった。


綾「よし、行くぞ辻村君。車を出せ」
辻「え、あ、はい!」
A「……いってらっしゃいませ」


玄関まで見送りに出たAさんを残して井戸へと向かう。車は私の愛車、シルバーのアストンマーティンだ。手間をかけて英国から取り寄せた、代理人の相棒としてこの上なく頼もしい車。
古井戸は県境の湿地のほとりにある。
よく言えばのどか、悪く言えば人気がなく薄気味悪い。井戸は細い十字路の先に川に面して作られていた。


辻「目の前に川があるのになんで井戸を掘ったりしたんでしょうね」
綾「作られた時には川がなかったのかもしれないだろう。もしくは有害だったことも考えられる」
A『又はその時代の呪師が儀式的なものとして作ったのかもしれない』


どこからかAさんの声が聞こえて驚いた。
見渡すがAさんの姿はもちろんない。


辻「え?何処から喋ってるんです?」
綾「馬鹿なのか、君は。鏡だ」


綾辻先生は手に鏡付きの懐中時計を持っていた。その鏡部分にAさんが写っている。

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乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» 同い年ですね! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a46352e6e0 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 乾 巽さん» 同い年……オーマイガァー (2019年8月17日 20時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです。因みに年は今15です (2019年8月17日 11時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 文才力の塊……。その文才わけてください← この小説とても面白くて大好きです!!私も作者様と年変わらないと思うので……羨ましいです……。 (2019年8月17日 11時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます、頑張りますね (2019年8月10日 10時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年1月23日 16時

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