辻村の憂鬱14 ページ24
綾辻先生は無言で隣の部屋に入ると服を手に戻ってきた。
それが目に入った瞬間飲んでいた紅茶を吹き出しかける。
辻「ぶっ……ゲホゲホ、ゴホッ。…………………何ですかそれ」
一目瞭然だけども。
話の内容から一発で分かるけども。
これは聞きたくもなる。
持っていたのは、服というよりドレスと言った方がしっくりくる衣類だった。
今Aさんが着ているワンピースとは比べ物にならないほど派手なもの。
真紅のふわりと広がったドレスは胸元に真っ白なリボンがついていて、袖口にも裾にもフリルがついている。
もう一枚はウェディングドレスですか!と言いたくなるような純白のドレス。
最早フリルとレースの集合体だと思う。
可愛いけど。
とてつもなく可愛いけども、どう考えたって人間の着る服ではない。動くことを前提にしてない。
綾「聞かなくとも分かるだろう。俺が選んだ服だ」
これは珍しく綾辻先生にズバッと言い切れる機会なのではないか?と思い大きく息を吸って口を開いた。
辻「−−−−−−−−これはないです」
今日はいい日だ。
辻「だってこの服着て家事をするなんて神経を使うでしょうし、そもそも動きにくいです。
料理もできませんよ。
それに裾が長過ぎです。階段登れないと思いますよ。
人形は動かないのでこういう服でもいいですけど、人間は動くんです。
それに自分じゃ着れないですよ、この服」
綾「それは態とだがな」
堂々と言う事ではないです。
しかもこういう服ってとんでもなく高いはず。
なんでこんなに買うかなあ…………………。
綾「しかしまあそうか。
君も曲がりなりにも女性だ、意見は参考にしよう」
辻「曲がりなりにもは余計です。だいたい、Aさんに聞けば良かったじゃないですか」
まさかとは思うけど、Aさんって綾辻先生に命令されない限り自分から喋らないのかな。
綾辻先生は無言で口を少し開けて固まった。
綾「………ああ。そうだな」
なんなんだ、この人は。
まさか本当にAさんを人形のように扱っていたのか。
聞けば答えてくれるというのに、物言わぬ人形だと認識していたのか。
綾「A。俺の選んだ服は好みではなかったのか?」
唐突に話を振られたAさんはゆっくり瞬きし、首を傾げた。
小さい口がぱくりと開く。
A「派手」
二文字だけ口にするとまた口を閉じた。
でしょうね。
無言でこくりと頷いてみせる。
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乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» 同い年ですね! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a46352e6e0 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 乾 巽さん» 同い年……オーマイガァー (2019年8月17日 20時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです。因みに年は今15です (2019年8月17日 11時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 文才力の塊……。その文才わけてください← この小説とても面白くて大好きです!!私も作者様と年変わらないと思うので……羨ましいです……。 (2019年8月17日 11時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます、頑張りますね (2019年8月10日 10時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年1月23日 16時