辻村の憂鬱 ページ1
息を整えてドアを開ける。
辻「おはようございます、綾辻先生」
私が挨拶すると綾辻先生は視線を持ち上げてまた本に目を戻した。
辻「綾辻先生。人と話すときは目を見て話してくださいって言ってますよね」
綾「俺はまだ何も話していないから言われる事はないな」
そんなの屁理屈じゃないかと思ったがぐっとこらえる。そう、私はミステリアスな女なのだ。
これくらいでへこたれるものか。
辻「それから!また昨日抜け出してましたよね?何度言えばいいんですか、貴方がこうして生活することができるのは特務課の温情からです。
私には綾辻先生の射殺許可があるんですよ。
牢獄の中で銃口突きつけられて過ごす方が良いですか?」
そこでようやく綾辻先生は視線を私に向けてくれた。
綾「それは困るな。人形屋にも行けん。では君に敬意を表して珈琲を淹れてもらおうか」
辻「え?ああ………はい、それくらいなら」
丁寧に抽出した珈琲に黒砂糖を入れ、綾辻先生に渡す。
随分と上手くなったと思う。
少し自慢。
って、
辻「私はメイドではありません!」
綾「相変わらず反応が遅いな、君は」
うう、また馬鹿にされた…………。
がくりと肩を落としふと部屋を見渡す。ふわり、とトーストの匂いがしたのだ。
辻「綾辻先生、朝ごはん食べられたんですか?」
綾辻先生はここ綾辻探偵事務所で365日24時間特務課による監視を受けている。
外出禁止なため買い物も特務課が差し入れているのだ。
食パンは今週渡していない。なのに、トーストの匂いがする。そして美味しそうなベーコンや目玉焼き、チーズ、要するに物すごく美味しそうで豪華な朝食の残り香だ。
先生はいつもそんなに多くのメニューを作らない。
綾「俺の朝食がどうかしたか」
辻「いえあの…………」
A「只今」
辻「うわああああああああああっ?」
背後からの声に悲鳴をあげてしまった。
私がさっき入ってきたドアが開き、白と黒のワンピを着た若い女性が気配も足音もなく立っていた。
思わず飛び退いて距離を取る。
周りは特務課が見張っているはず。
周囲には一般人はいないはずなのだ。
しかも今何と言って入ってきた?
只今、だ。
あたかもここに住んでるような口ぶりだ。
綾「帰ったかA」
辻「………………へ?」
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乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» 同い年ですね! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a46352e6e0 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 乾 巽さん» 同い年……オーマイガァー (2019年8月17日 20時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです。因みに年は今15です (2019年8月17日 11時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 文才力の塊……。その文才わけてください← この小説とても面白くて大好きです!!私も作者様と年変わらないと思うので……羨ましいです……。 (2019年8月17日 11時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます、頑張りますね (2019年8月10日 10時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年1月23日 16時