第264話:溺れる ページ28
熱と湿度を半分に分け合いながら、音を立てて触れては離れてを繰り返す。
少し力を入れたらもうすんなり割って入る舌先で歯列を擽ってやれば、彼女の瞳が誘惑と迷いに大きく揺れる。
ゆらり、ぐらりと。
ああ、僕は君の、理性が誘惑に負ける瞬間が。
意地が快感への期待に塗り替えられる瞬間を見るのが、とてもとても、堪らなく好きなんだ。
蕩け始めた脳に必死に抗うその表情。
どれだけ魅惑的で興奮させられるか、分かってるの?
やがて耐えきれず震えながらに開かれた歯の間をゆっくりと通過し、具合を確かめるように内側に触れていく。
歯の裏、内頬、歯茎……特に上顎と舌裏側の付け根はAの好きな所でしょ?
知ってるよ。
「眼」で見るまでもない。
微かな反応を楽しみながら、あちこちに逃げ回っていた彼女の舌先に、ちょん、と軽く当てる。
「ンッ………!」
痺れたようにビクッと身体が揺れる。
優しく表面を撫でているだけなのに、どんどん呼吸が荒くなって声が短く高くなっていく。
声の抑えが利かなくなってきているのだろう。
敏感な彼女にとっては舌を擦り合わせる強い刺激は耐え兼ねるのか、所在無さげにさ迷わせていた手を、僕の背中に回してきた。
ぐ、また可愛いことをしてくれる。
自然と彼女を抱き寄せる手にも力が入る。
それを機に体勢の上下を入れ替えて自身も膝を椅子の隙間に載せる。これでだいぶお互い楽になった……し、もっと求めることができる。
彼女の舌先を軽く噛んで催促すれば、Aがおずおずと差し出し、僕の舌にそうっと乗せてきた。
僕の真似をするように舌先をくるりと回したあと、辿々しくちりちりと擦るような動きをする。
拙いながらも頑張って応えようとしてくれるのが本気で嬉しくて、お返しとばかりに舌裏の根元から先までをゆ……っくり、ざりざりと撫で上げると、彼女はギュッと目を瞑って嬌声を漏らした。
かわいい。
好きだ、もっと欲しい。
もっと奥まで、Aの全部奪いたい。
嵌るほどに欲深くなっていく。
好きな子と口付けをすることがこんなにも幸せで気持ちのいいことだなんて、数ヶ月前の僕には思いもよらなかった。
彼女が快感の反応をする度に、嬉しい、もっと、と興奮した脳が訴えかけてくるのだ。
脳内麻薬とはよく言ったものである。
よっぽど僕の方がAに溺れている。
288人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時