第258話:感覚 ページ22
という流れだと思ったんだけど。
ガシッ
「う!?」
髪をかき混ぜ頬を擽っていた彼の両手が、びったりと風の通る隙間もなく私の両耳を左右から挟むように塞いだ。
そこそこの音量でスピーカーから流れているはずの鐘の音がごく遠くに微かに聞こえる。
ちょっと!?
予鈴!授業授業!!
「んーーー!!んむーーー!!??」
口も塞がれたままなので抗議も詰まった音でしかできない。
予想外の赤司さんの行動に驚き思わず手を耳から引き剥がそうと赤司さんの手を上から掴むけど……当然、びくともしない。
赤司さんが机に飛び乗った時くらい訳が分からず、「?」を飛ばし続ける私。
赤司さんはほんの一瞬、1ミリだけ口を離してボソリとひと言何かを言った。
近すぎて口が見えないし耳も塞がれてるので何を言ったかは分からなかったけど、私にとって何かまずいことだろうというのは今までの経験に基づく勘で分かった。
赤司さんの吐く息がふっ、と当たった、と思った瞬間。
じゅるるるるッ!
「ッ!?!?」
頭の中に物凄い音が響き渡った。
赤司さんが強く舌を吸ったのだ。わざと、音が鳴るように。
外部の音を遮断され、音という音を頭の中に閉じ込められている私は堪らない。
「ッひ!?んぐ、うーーーーッ!」
リップ音なんて可愛らしいものではない、体内の音が頭蓋の中で反射し続け、先程までとは比べ物にならないくらい、全部を感覚器官が受け取ってしまう。
わざと立てられる水音と動き回る舌に、頭の中も口の中も掻き乱されておかしくなりそうだ。
もう私も必死で抵抗しているけど、どれだけ手の甲に力を入れようが、背中を叩こうが全く意に介さず蹂躙が続く。
いや違う、私の腕にどんどん力が入らなくなっているんだ。力が抜けていく。
目の前が白黒にチカチカして見える。
心臓、痛い。
一度鎮まった熱が再び高められてしまって、体の奥、お腹の下の辺りまでがきゅう、と疼いて熱い。
なにこれ。わかんない、だめだやばい。
舌が絡まって音が鳴る度、肩が跳ね上がって、がくがく震えてる。
自分の身体の何一つコントロールできない。五感の殆どを奪われている。
なにも考えられない。
あたまが真っ白で、激烈なおとだけがなっている……
……あ………
……だめ…………
ーーー………
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時