貴方の腕の温もりが

温もり ここのそじ あまり いつつ ページ45

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私がそう言うと、お母さん達がベッドの側に駆け寄ってきた。









「翼君、ちょっとごめんね」









先生はテキパキと作業を行い、翼の診察をする。




瞼を持ち上げてライトをかざしたり、




聴診器で心音を聞いたり。









　









「・・・うん、異常はないね」









一通り診察を終えると一言呟いた。




そして、その視線をお母さんに向ける。




お母さんは無言で頷くと私に向き直った。




なん、だろ・・・




一気に空気が重くなった気がする。









「あ、の・・・」









なんだか嫌な予感がして声を漏らした。




聞きたくない事が言われる気がする。




お母さんはしばらく目を伏せていたけれど、視線を翼に向けた。




翼はなにか言いたげに酸素マスクを取ろうとしている。




翼の事かな・・・




先生が翼の酸素マスクを取り外した。




翼はゆっくりと首をこちらに向けて私を真っ直ぐ見つめる。









「母、さん。俺が、話す」









チラリとお母さんを見ながら翼が呟いた。




お母さんは 分かったわ、と言って先生と病室の外に出る。









「ここに居ないんですか・・・？」









わざわざ外に出ようとしたお母さんに声をかけた。




最初はお母さんから話そうとしていたのに、どうして外に出るんだろう。









「・・・二人で、ちゃんと話し合いなさい」









お母さんはドアの前で振り返って微笑んだ。




その瞳には、涙が溜まっている。









「これは、彩ちゃんの為でも 翼の為でもあるから」









そう言い残すとお母さんと先生は病室の外に出ていった。




私はゆっくり翼の方に向き直り、近くの椅子に腰を下ろす。




そして翼の手を握って 瞳を見つめた。









「・・・あ、のね、彩」









翼は掠れた声で必死に言葉を絞り出す。




私はその言葉を聞き逃さないように耳を傾けた。









「俺、もう、限界みたい・・・」









翼の言葉に思わず身体に力が入る。




翼の手を握る両手が 震え始めた。









「もう、ね。動かないんだ」









僅かに翼の手に力が入るのが感じられる。




けれど、それは微々たるもので。




知らない内に溜まっていた涙が溢れた。




本当に、動かないの・・・？









「そ、んな・・・」









翼は私は優しげに見つめると、言葉を続ける。

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