温もり やそじ ページ30
*
「さっきまで、美門の部屋にいたんだ」
私の問いに淡々と答える黒木君。
なぜ、翼がここにいるのを知ってるの。
どうして翼に会いに来たの。
途切れることのない疑問がいくつも浮かんでくる。
「アーヤ、気付いてなかった?」
ふと黒木君が私に問い掛けてきた。
気付く・・・?
何に。
「・・・なんの事?」
心当たりが全くない。
そんな様子の私に黒木君が呆れたように笑う。
「アーヤ、もう少し周りを見渡すようにしなよ」
その言葉で黒木君が何を言いたいのか、なんとなく分かった。
私は黒木君を見ながら口を開く。
「・・・まさか、ついてきたの?」
ご名答、と頷いた黒木君。
その顔には余裕な笑みが浮かんでいた。
「若武先生がうるさくてね。つけるように言われたんだ」
けれど、その笑みはすぐに消える。
「まさか、美門がこんな状態だったとは思わなかったよ」
そう言って目を伏せる黒木君に、私は口を開いた。
これは今まで必死に翼が隠してきた事だから。
だから、お願いだから。
「・・・翼の事は、皆には言わないで」
そう、小さく呟いた。
黒木君は目を見開いて私を見る。
「・・・アーヤ、それは」
「お願い」
これだけは譲れない。
もうKZを除名になっても構わない。
生きがいを失う事になるけれど、翼には代えられない。
だから。
「私が翼と付き合ってるって言ってもいいから」
「除名になる覚悟もできてるから」
「お願い、これだけは言わないで」
黒木君の瞳を真っ直ぐ見つめ、そらさない。
譲る事はできないから。
黒木君は軽く息を吐き、髪をかきあげた。
「・・・分かったよ。お姫様の頼みなら仕方ないね」
降参、というように両手をあげて目を瞑る。
私は少し笑って頷いた。
「ありがとう」
黒木君は軽く頷いて片手をあげて背を向ける。
「じゃ。俺は用済みだから、この辺でね」
颯爽と去っていく背中にもう一度感謝を言い、私も背を向けた。
・・・私には まだやるべき事がある。
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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年3月22日 15時