温もり むそじ あまり やっつ ページ18
*
素直になれ、と言ったときの翼は、驚いていた。
図星を突かれていた事を、自分でもやっと気付いたかのように。
「翼はいつまで変な意地を張るつもりなの?」
私は強い口調のまま、翼を問いただす。
「もう全部バレてるんだよ? 翼のお母さんからも話聞いたよ?」
なんの感情かも分からない涙が流れた。
「私はどんなに突き放されても諦めないよ」
声も体も、全てが震える。
「好きなんだよ、翼の事」
涙は止まらず、とめどなく溢れていく。
「ねぇ、お願いだから、素直になって・・・」
堪えきれずに嗚咽が漏れる。
なんで泣いているのか、自分でも分からない。
怒り、哀しみ、寂しさ、悔しさ。
どれかなのか、全部なのか。
ただ、翼が関係している涙なのは分かる。
「・・・アーヤ」
ふと、優しい声で苦し気に名前を呼ばれる。
その瞬間、私は翼の腕の中に包まれた。
「ぁ、たす、く・・・」
翼の腕の中で、温もりを感じる。
それと同時に翼の腕が震えている事にも気付いた。
「翼、泣いて・・・」
そっと、翼の顔を見上げる。
「・・・えっ?」
翼の瞳には涙なんてなかった。
ただ、苦し気に顔を歪めながら、必死に私を抱き締めていた。
「・・・っ、翼、離して。離れて」
「いやだ」
「お願い、翼ってば」
「離したく、ない」
震える腕で私をキツく抱き締める。
けれど、段々と力が抜けているのが私にも分かった。
そう、翼はALSなんだ。
筋力だって落ちている。
「お願い、無理しないで、翼」
「無理なんてしてない」
「私は翼の側にいるから」
「じゃあこのままでも良いでしょ」
「良くない! 翼、筋力落ちて・・・」
「・・・もう少し、このままでいさせて」
弱々しい声で私の肩に顔を埋めながら言った。
なんで・・・
「もう、全部バレてるんなら」
翼が吐き出すように呟いた。
「カッコつける必要もないでしょ」
頭をグリグリと甘えるように肩に擦り付ける。
「・・・少しだけ、甘えさせて」
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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年3月22日 15時