温もり むそじ あまり むっつ ページ16
*
⎯⎯⎯⎯⎯ 着いた。
大きく深呼吸しながら目の前の建物を見上げる。
お母さんに背中を押してもらったおかげか、怖くない。
病院の入り口前で傘を閉じ、傘立てに入れた。
そこから外来受付を通りすぎて病棟に向かう。
もう少し、もう少し。
病棟に入るとエレベーターに乗り、3階のボタンを押した。
『⎯⎯⎯ ドアが開きます』
アナウンスの声を聞いて顔をあげる。
よし、行くぞ。
いくつもの病室が並んでいる廊下を歩き、目当ての病室の前で止まる。
327号室。ここだ。
ふと、以前の光景が蘇る。
⎯⎯⎯『無理してまで、来なくていいよ』
⎯⎯⎯⎯『もう、ここには来なくていい』
⎯⎯⎯⎯⎯『いい、もう来ないで』
一瞬、躊躇った。
また引き返そうとした。
なにをしてるの、私。
頭を振り、余計な考えを追い出す。
弱いままだとダメでしょ。
「フゥー・・・」
深く息をついて、目をあげる。
さぁ、行こう。
右手でゆっくりとドアをノックした。
「⎯⎯⎯ はい」
翼の返事を聞いた瞬間、ドアを開け放った。
この病室には翼しかいない。
・・・遠慮なんていらないでしょ。
夢で見た私は、入ってもいいか聞いてたみたいだけどね。
けど、そんなのは全部夢だから。
⎯⎯⎯⎯ 私、夢の中みたいないい子ちゃんじゃないから。
「・・・なんで来たの」
「ワガママな王子様とお話しにきた」
私は挑発するようにニヤリと笑った。
・・・お母さんに思ってる事、全部言ってくるよう言われたからね。
「もう来るなって、昨日言わなかったっけ」
翼は少し不機嫌で、怒っているようだった。
「それに何、ワガママな王子様って」
翼は鋭い目付きでこっちを見ている。
私は少し笑って答えた。
ここは夢での台詞を使わせてもらおうかな。
「言ってたっけ?」
「言ってたとしても、忘れちゃった」
自分でも、ここまで大胆になれたことはないと思う。
いつもなら恐縮して引き返しているところだ。
「はっ・・・?」
その証拠に、翼は目を見開いて固まっている。
なるほど、本当に翼は押しに弱いんだ。
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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年3月22日 15時