温もり みそじ あまり やっつ ページ38
*
・・・え?
送る?
「いいよ、上杉君だって帰らないといけないし」
私は必死に首を振る。
「え、そんなに嫌?」
上杉君は驚いたように私を見る。
いや、別に嫌じゃないけど・・・
「そうじゃないけど、迷惑かけちゃうし」
迷、惑・・・
翼の言葉がフラッシュバックする。
“ここに来られると、迷惑だから・・・”
思い出すだけで、胸が苦しくなった。
制服の胸元をギュッと握りしめる。
「・・・立花、苦しいのか?」
上杉君が覗き込むように顔を寄せた。
わっ・・・
「だ、大丈夫」
飛び退くように上杉君から離れた。
「本当かよ」
若干疑わしそうな視線を向けられるが、横を向く。
「迷惑じゃねーし、体調心配だし、送る」
ため息混じりにそう言われ、何も言えなくなった。
上杉君は私の家の方向に足を向けて歩き始める。
「ほら、行くぞ」
気遣うような声色に背中を押され、上杉君の隣に並んだ。
歩幅も合わせてくれている。
「お前さ、もっとマシな言い訳考えろよ」
呆れたような声で突っ込まれた。
あ、やっぱりバレたか・・・
「なぁ、立花」
そう言うと上杉君は急に立ち止まった。
ん、何・・・?
「なんで、泣いてた」
ドキリとして鞄を落とす。
まさか上杉君が、そこを突っ込んで聞いてくるとは思わなかったから。
「今日、何があった」
上杉君の瞳は真剣そのもので、目をそらせなかった。
静かな時間が私達の間を流れる。
「あ、の・・・」
沈黙に耐えられなくなり、口を開いた。
「いや、話したくないならいい」
え・・・
上杉君は一瞬、目を伏せて僅かに笑った。
「話したくない事くらい、誰にだってあるしな」
そう言った上杉君は、苦しそうで
まるで別人のように弱々しかった。
・・・上杉君も、何かあったのかな。
「じゃ、行くぞ」
私は黙って頷き、上杉君の後を追う。
そこからは私も上杉君も喋らなかった。
ただ無言で夜道を歩く。
気まずかったけれど、送ってくれるだけありがたかった。
「じゃ、な」
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ミラゴン - もう、感動して涙が止まりません。こんなにも感動する話は、こんなにも涙が止まらない話は初めてです。改めて恋、友情、そして、命について、考えさせられるお話ですね。また更新されるのを心待ちにしています。 (2019年2月25日 20時) (レス) id: 5ed9be59f6 (このIDを非表示/違反報告)
Kokone♪(プロフ) - ありがとうございます!では、載せますね。お返事ありがとうございます。 (2019年1月15日 20時) (レス) id: 1acdcbf3ab (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - Kokone♪さん» Kokone♪様、初めまして。わぁ、お誘いいただきとても嬉しいです!全然構いませんよ。わざわざ報告していただきありがとうございます! (2019年1月15日 19時) (レス) id: d18177599f (このIDを非表示/違反報告)
Kokone♪(プロフ) - smireさん、はじめまして。私、kokone♪申します。こちらの作品を、『泣けるお話、集めてみました。【探偵チームKZ事件ノート】』という私の作品に載せたいのですが、よろしいでしょうか。本当に泣けるお話なので、是非とものせたいです。お返事、待っています。 (2019年1月15日 17時) (レス) id: 1acdcbf3ab (このIDを非表示/違反報告)
smile - クローバーさん» クローバーさま、コメントありがとうございます。時には更新をしなかったり、一度に大量更新したりと不規則でしたが、ついに続編までいけました…(汗) 応援ありがとうございます! (2018年3月27日 15時) (レス) id: d18177599f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年2月23日 18時