織田作之助 ページ45
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「足を撃たれたのか」
驚愕の表情をしているジイドに銃を向けたまま、織田作さんは芥川さんを担ぎ上げた。
「ッおい!貴様、何をする!」
降ろせ、と暴れる芥川さんにも気にせず、私に目を向ける。
「そっちは」
「……歩け、ます」
ジイドがその顔に笑みを滲ませる。
それに振り替えることなく、そのまま走り出した織田作さんの後を追ってドアをくぐった。
やっと外に出られた。
そう思った途端、上から羅生門が降ってきた。
ぎょっとして立ち止まる。
見れば芥川さんは織田作さんから離れ、地面に膝をついて俯いていた。
「貴様の名は太宰さんから聞いている。一介の下級構成員だ」
「そうだ」
「そして、あの人の友人だと聞いた。真か」
芥川さんは織田作さんを睨み上げた。
その視線を受け止め、織田作さんは静かに答える。
「その手の言葉は、軽々しく口にしない主義だ」
「……太宰さんは言った。 僕は百年経っても貴様には勝てぬと」
「仲間割れをしている時間はない」
その言葉を聞いているのかいないのか、芥川さんは鬼の形相で羅生門を繰り出した。
「何故だ。何故太宰さんは僕を!」
織田作さんは先程のジイドのように淡々と攻撃を躱し、一気に芥川さんとの間合いを詰める。
そして、芥川さんが一瞬身を引いた隙に、鳩尾に拳を叩きこんだ。
織田作さんが小さく呟く。
「悪いな。お前に期待している友のためにも、必ず連れて帰らねばならん」
衝突を免れ安心したのも束の間、今度はジイドが姿を現した。
「予感があった」
「何の話だ」
「この国でその異能力者に会えるという予感だ」
ジイドが一歩、二歩と距離を詰める。
「俺はジイド。我ら幽霊の魂を解き放つ者を探しに来た」
「知人の葬儀業者なら割引料金で紹介できるが」
天然なのか軽口なのか、場に不似合いな台詞を吐きながら、織田作さんが目配せをしてくる。
右肘が痛いがそれどころじゃない。
多分、ジイドには織田作さんじゃないと勝てない。
そう思って頷き、芥川さんに向かって駆けた。
この際右肘より芥川さんの方が大事なので、重力操作も交えて彼をおぶる。
途中で起きたら殺されるな、とか思いながら、ちら、と後ろを振り返った。
二人とも異能が同じなようだったので、大丈夫だろうか。
何やら口論をしているように見えた。
心の中で感謝と謝罪を述べながら、今度こそ背を向けて駆けだした。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年10月1日 22時