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一章 始まりの朝 ページ1

冬獅郎side



「起きて!起きて冬獅郎!」


 ……うるせぇ。


「今日は桃が家出ていっちゃうんだよ!」


 …うるせぇ……!!


「起きろーーーー!!!!」


「うるせぇぇぇぇぇぇえ!!!!」


 布団から飛び起きると目の前に顔があり、見事に激突した。


「いたいな!なにするの!」


「それはこっちのセリフだ馬鹿野郎!」


 目の前に立っているソイツの名前は雛谷(ヒナノヤ)日南子。
数年前からウチに居候している奴だ。


「こら!今居候って思ったでしょ!?」


「ゲッ、桃!」


 今俺に怒ってきた奴は雛森桃。
俺の幼なじみだ。というか何でコイツは俺の頭の中が読めるんだ……

 ハァ、とため息を吐く。


「冬獅郎!ダラダラしてないで早くお見送りするよ!」


「わーかったよ。行けばいーんだろ行けば」


「こらこら冬獅郎、そんなこと言いなさんな。
せっかく桃が真央霊術院に行けることになったんだから素直に送りなさい」


 ……ばーちゃんに言われちまったらしょうがねぇ。


「じゃあね!シロちゃん!日南子ちゃん!おばあちゃん!お休みのときにはまた戻ってくるからね!」


「うん!立派な死神さまになってきてね!」


 死神……か。くだらねー。


「あたしおとなりさんにあいさつしてくる!」


 そう言って桃は隣の家に走っていった。


「冬獅郎素直じゃないなー、桃が霊術院行くのがさみしーんでしょー?」


 なっ!?いきなり何を言うんだコイツは!!


「そんなわけねーだろ!」


「まったまたぁ!そんな顔赤くしちゃって!」


「こら日南子、あんまり冬獅郎を困らせちゃだめだよ」


「はぁーい」


 駄弁りながら俺らは桃を見送るために外に出た。

 外に出ると、桃が隣のやつにあいさつしている所だった。
あいつらは俺と日南子を見ると怯えたように去っていった。

 潤林安の奴らはみんなそうだ。俺の髪を刺してか、あるいは目を指してか、はたまた性分を指してか、口を揃えて冷たい奴だと言う。

 日南子に関しては赤髪という派手な見た目だが良いやつなんだ。
だけど俺を悪く言うやつらにいつも殴りにかかるから俺と一緒に怖がられている。



「じゃあみんなー!行ってきまーす!」


「行ってらっしゃーい!」


「帰ってくんなー寝ションベン桃ー」


「またこの子はこんなことを……」



 桃は精霊廷の中へ消えていった。



 ………………。




 沈黙が流れた。

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作者名:ひまり | 作成日時:2020年4月15日 19時

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