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杏寿郎がいなくなってからも、時は確実に流れていった。
杏寿郎の遺言を伝えに来た少年と会ってから、千寿郎君は少しずつ元気を取り戻していった。
お義父さんも、酒をやめて再び剣を握り始めた。
彼が死んだ時のままなのは私だけ。
杏寿郎からの遺言は、なんだったっけ。
最近はそればかりを考えて過ごしている。
何度も何度も千寿郎君に聞いているのに、すぐに忘れてしまうのだ。
食事も喉を通らなくて、布団から出られなくなった。
心配そうに私を見つめる千寿郎君に、何かを言うことすら出来なくなっていった。
私は一日中寝ていることが増え、医者が何度も屋敷を訪れる。
その度に、医者は「明日亡くなってもおかしくない状況です」と言った。
しかし皮肉なことに、私はそれから一年ものうのうと生き延びている。
寝ていることしか出来ない、役立たずのままで。
でもそれも、もう終わりのようだ。
「千寿郎くん…弱い姉さんでごめんね…」
「姉さん!姉さん!!」
最後の力をふりしぼり、千寿郎君にそう伝える。
何故だか私はすごく安心していた。
安らかな気持ちのまま、ゆっくりと目を閉じる。
愛おしい人の顔すら思い出せないまま、私は静かに息をするのを止めた。
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みーた(プロフ) - 麗羽さん» 泣かないでぇ(´;ω;`) (2019年10月12日 21時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
麗羽(プロフ) - 普通に泣きました……( ;∀;) (2019年10月12日 13時) (レス) id: 835b4d5769 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - みーたさん» ありがとうございます! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 483e5f8c50 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - ちぃさん» 申し訳ございませんでした!すぐにルビをふってまいりますので少々お待ちください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - おさるさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年9月29日 20時