Affect135 ページ5
Aside
倒れかけた体を、何とか踏んばって留めた。
くそ、逃した、悔しい。サイドエフェクトで追える?どこかに遠征艇への入り口があるはずだし、そこを探し出して中に入……いや、トリガー無しの私が乗り込んだって、敵の捕虜にされる事態も考えられるわけだし賢い策ではない。
「くそ………っ!」
その時。
「グワァアア!」
「新型………!?」
曲がり角の向こうから、新型トリオン兵ラービットが現れた。こいつはトリガー使いの捕獲用。しかも今私は生身で、A級隊員で、敵からしたら捕らえない他ないだろう。そいつは私めがけてまっすぐ突っ込んできた。
まずい、どうする。
「亜桜!」
上。そこから、その声が降ってきた。
ザクッ!グワァ!
そいつの攻撃が新型のうなじのあたりを刺して、新型は悲鳴を上げた。一方それを刺した隊員はそのまま身軽に私の目の前に着地し、私を庇うように敵に槍を向ける。
「うおっ血やべーじゃん!大丈夫かよ」
「米屋……?あれ私そんなそっち側寄ってた?」
「戦ってるうちに来てたんじゃねーの」
米屋陽介。そいつが、新型から私を助けに来てくれた。
私は人型と戦うとき、出水や米屋、京介や三雲たちのいる場所から割と離れたつもりだった。恐らく戦闘がスタートした時は離れた場所に移動できていたが、やりあっているうちにだんだん出水たちの方へ寄っていっていたのだろう。米屋が駆けつけられるくらいには、近くまで来ていたのか。
けど、おかげで助かった。
「とりあえず、それで血止めるぞ」
「あっうん、ありがと」
米屋が私の制服のリボンを指差したので、私はそれを解いて米屋に差し出す。そのまま彼がそれを受け取って、私の傷口をぎゅっと縛った。
「ごめん米屋、助かっ……」
ぐいっ
台詞を言い終わるより先にその感覚が来て、私は驚いて言葉を詰まらせた。キョトン、とだらしない顔で米屋を見上げる。そのまま米屋がタンッと地面を蹴ってふわっと宙に浮いた。
「えっ、ちょっ!」
「なにびびってんだよ、逃げんぞ」
私を横抱きにして、米屋が屋根の上を駆ける。どうやら私を新型から逃してくれるらしい。どこまでいっても優しいな、こいつ。なんで生身なのか訊いてこないし、人型との決着がどうなったのかも訊いてこないし、なんで一人なのかも訊いてこないし。いつだって米屋は、私が話すまで何も探ってこない。そういう、優しいやつだ。
「グワァ!」
「よし、追ってきやがったな。よかった〜市街地行かねーで」
傷口に目をやると、桜色のカーディガンが血で深く染まっていた。
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るえら(プロフ) - うわー!!!!別サイトから一気読みしてしまった、とても面白いです!!更新ゆっくり待ってます!!! (10月20日 14時) (レス) @page35 id: 63d223fd88 (このIDを非表示/違反報告)
honoka - 一気読みしちゃいました!!続き楽しみにしてます💗 (6月21日 22時) (レス) id: 944c15d446 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - しおむすびさん» こんにちは、コメントありがとうございます(;_;)長くなってきたにもかかわらず一気読みありがとうございます!更新止まっていてすみません;;原作の展開を見ながらゆっくり進めて参ります……! (2022年12月13日 12時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
しおむすび(プロフ) - 一気読みして最後まで読んでしまいました…!主人公の生き様にたくさん勇気が貰えます!!更新ゆっくりと待ってます︎☺︎ (2022年12月9日 0時) (レス) id: 2152d546a1 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 紅羽さん» コメントありがとうございます!通知漏れしており気づくのが大変遅くなってしまってすみません(;_;)めちゃくちゃ嬉しいお言葉ありがとうございます!励みになります……!原作の展開など見ながらゆっくりです更新して参ります〜! (2022年12月4日 12時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2021年1月3日 1時