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俺が迷いながらも頷くと
パァという効果音が聞こえてきそうな程の笑顔を見せ、
ぐぃぐぃ腕を引いて俺を机の前に座らせた。


「待ってて」


そう残し、隣の部屋に消える。


「なんなんだアイツ……」


女の雰囲気につい忘れていたが
ここは監獄だ。

用も無い囚人を引き止めて
一体どういうつもりなんだろうか。


普通の病院の診察室ような雰囲気の
こじんまりした部屋。
薬棚には様々な瓶が収納され
特に目立つ物は無い。

一つ違うことといえば、
診療室なのに本棚があることだろうか。

本の背表紙に書かれた文字は
様々な言語で、パンピーの俺には
そのジャンルすら分からない。


「淹れたよ。ゼラニウムって知ってる?」

お盆を手に戻ってきた女が俺の前に座った。

「赤い花なんだけど、そのフレーバーティーなんだ」


渡されたカップの中で揺れる深い赤色の水面。

紅茶なんて洒落た飲物
そういえば久しぶりだ。

口をつけることを躊躇う俺に女が肩を落とした。

「もしかして、苦手だったかな?ごめん」

「いや。紅茶なんてあんま飲まねーから」



流し込むと胸にフワリと甘い香り。

喉に抜けるかすかなミントの冷感がなんとも心地良い。



「囚人に茶なんか出してどーすんだ」

既に二杯目を注ぎ淹れている女にそう問いかけた。


「んー?新入の囚人さんへ挨拶?」

「毎回そんなことしてんのか」

「いやそーでもない」



女は俺のプロフの前科については触れず、
日常生活を好んで聞いてきた。


仕事のこと。
好きな物。
かぶき町のこと。


「万事屋?何それ」

「君の部下の子達に会ってみたくなったよ」

「羨ましいな、そんな素敵な街。お邪魔しちゃおうかなァ」



俺にとっては何ともない話だが
女は一つ一つを嬉しそうに聞き入った。

まるで本の読み聞かせを聞くガキのようだ。

そのくせ、女自身はあまり多くを話したがらず
結局ほとんど俺ばかりの話になってしまった。

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しゃしゃねこ(プロフ) - あーたぁさんだぎぃさん» そういう事だったんですね!教えてくださり、ありがとうございます!更新、頑張って下さい! (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0f734cf238 (このIDを非表示/違反報告)
あーたぁさんだぎぃ(プロフ) - かのんさん» メッセージありがとうございました!! (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0b40d94bc8 (このIDを非表示/違反報告)
あーたぁさんだぎぃ(プロフ) - かのんさん» 目次の数字は、構想の段階で囚人番号に使用する予定だった数字です。番付方法から結構細かく設定していたんですが、モブの見分けがつかなくなりそうだったので止めました(笑)ゆるりと更新していきますので是非ともお付き合いよろしくお願いします。 (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0b40d94bc8 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 凄い面白くて、読み応えがありますね!!つかぬことをお聞きするのですが、話の目次、0617とかって、どういう意味ですかね?教えてくだされば幸いです。更新頑張ってください! (2017年8月6日 23時) (レス) id: 0f734cf238 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あーたぁさんだぎぃ | 作成日時:2017年8月5日 11時

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