【おそ松さん】泪が止まらない。

二十九粒 ページ29

路地裏を宛もなく彷徨う私。


幸い人影などは一切見られず、おもしろビックリ人間としてテレビ局に突き出される心配はない。時折すれ違うヤンキーさんもマスクにサングラス姿の不審者とは関わりたくないようだ。


便利だなこの不審者スタイル。

警察に会ったら職務質問待った無しだけど。




泪でグチョグチョにぬれているマスクを取り、サングラスをポケットに仕舞う。

いつの間にかかなり大通りから遠いところに来てしまっていて、これ以上進むと帰り道がわからなくなるかもしれないと危惧した私は踵を返して明るい方へと歩き出した。



「……なぁあ」



否、歩き出そうとした。

後ろから聞こえてきたのは猫の鳴き声で。振り返って見るとそこにはメガネを掛けた猫がお座りをしている。


あぁ、この猫は見覚えがあるぞ。確か一松の友達……親友だっけか。

猫が友達なんて羨ましい限りだ。言葉を喋らない彼等(猫達)と一緒にいるのは気が楽でいい。



「こんなところで何をしてるんだ？早く一松の元へ帰らないと心配されるぞ」


近寄ってスルリと撫でてやると、猫の口からは信じられない鳴き声が漏れた。いや、鳴き声ではなく、




「お願い。置いて行かないで」





人の言葉と言うべきだろうか。

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