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第百五十三話 ページ4

そしてついにラストシーン。
渋る白うさぎを吐かせて入手した情報。それは隠された通路を通れば、元の世界へ戻れるということ。だけどそれと引き換えに、アリスのためだけに作られたこの世界は壊れるということ。
元の世界に戻りただの物語の登場人物である彼らの存在を無に帰すか、元の世界に帰るのを諦めこの世界の住人になるか。

その二択を迫られるアリスは――

「どうする?」
「どうするの?」
「あぁもう、落ち着いて悩ませて」
「悩んでるの?」
「どうして? アリスはどうしたい?」
「私は……」

私の周りをくるくる回る双子に、私はうつむく。

「なんてことはない。迷うこともない」
「……帽子屋」
「君の好きなように、君だけの決断を」

私の金髪を掬って、軽く口づける。あわててそれを振りほどくが、帽子屋は微笑みを向けるだけ。
それが何故か悔しくて、私は顔を逸らす。

「そんなことできないでしょう。あなたたちの命がかかっているのよ。逆になぜあなたたちはそんな、自分の命を軽視するような発言をできるの?」

そう問いかけると、帽子屋は首を傾げ、双子は顔を見合わせる。

「だって僕たちは」
「そう、僕たちは」
「「物語のキャラクターに過ぎない」」
「アリス、君が本を閉じれば、この世界は終わる。それだけの存在なんだ」
「本は燃える」
「破れる」
「寿命がある」
「いつか塵になる」
「「僕たちは、有限の存在だ」」

そう、当然のように彼らは言う。
私は悲しげに顔を歪ませた。

「そんな簡単に私は割り切れないわ。私にとって貴方たちは生きている。今この瞬間、私と同じくらい、いえそれ以上に、生きている」
「……アリス」
「だから、考えさせて。考えすぎて苦しくなるくらい、考えさせて」

そう私が言うと、帽子屋はふぅとため息をつき、双子は笑い声をあげた。

「君が「いい子」である理由は、ないんだよ?」
「……それでも」

私は、いい子でいたい。
それが正しいことだから。ううん、それで私が満たされるから。

「……わかった、気が済むまで考えて。そして君の正直な気持ちを教えて」

ぽん、と帽子屋……いや、先生の手が私を頭を撫でる。

私の正直な気持ちを、聞かせたら貴方は困るでしょう。
先生と生徒。この壁は、そう簡単に乗り越えられるものではない。
私は貴方に恋してはいけない、貴方も私を受け入れてはいけない。

同級生だったら、別のところで出会ったら、きっと違った。
でも、それでも私は、先生であるあなたに、
恋をした。

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年5月19日 17時

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