第百九話 ページ10
静まり返った病棟。面会時間終了まで1時間を切って、早い人はもうすでに就寝しているころだろう。
この先から朝の起床時間まで、病院が一番静まり返る時間帯。
私もそろそろ寝る支度をしようか、と思っていると入口のほうから名前を呼ばれる。
「邦月」
「あ、先生！」
入院してから、先生はこうして終了時間1時間前くらいに来ては授業の復習をしに来てくれる。大体一週間に二回くらいの頻度でだ。
「どうだ？ 具合は」
「今週末には退院だそうです」
「そうか！ それはよかったな」
そばに置いてあるパイプ椅子に腰かける先生はまるで自分のことのように喜んでくれる。
それが少しうれしくて私はふふ、と笑ってしまった。
「登校には松葉杖とかつかなきゃいけなくなりますけど。目立つのは嫌だなぁ」
「それくらいの罰は甘んじて受けろ。お前は学校の月一イベントを潰したんだから」
「うー……委員長として立つ瀬がない……」
「まったくだ」
先生はあれから私に口を酸っぱくして対応するようになった。「お前をしっかり者ってレッテル付けしてた俺がばかだった」なんて言われた日には涙目になった。なんてひどいことを言うんだ。
教科書を広げながら先生は続ける。
「英語はまぁ正直復習しなくてもお前は大丈夫そうだが、ほかの授業は大丈夫そうか？」
「ダメそうです……一応和樹くんにはノートを頼んでるんですが、週末は後れを取り戻すために潰れそうです」
「そうか、まぁしょうがないよな」
ですねぇ、と私は英文字の羅列に目を走らせる。
うん、これくらいだったら塾に通っていた私ならすぐ追いつける。英語はそんなに心配しなくて大丈夫そうだ。
「にしても六月になったとたん暑苦しくなってきたなー」
「そうですか？ ずっと病棟にいたので六月になったことすら気づきませんでした」
期間は二週間ちょっとだったから、まぁ順調な回復だったんだろう。
「ニートみたいなこと言ってんなぁ」
「ちょっと、人聞き悪いことを言わないでくださいよ」
からかわれ憤慨し、そんな他愛もない会話をしていたらいつの間にかもうじき一時間が経ちそうな時刻となっていた。
面会時間を終了する旨を知らせるアナウンスが病院内に響き、先生は荷物を片し始めた。
少しだけさみしいけど、まぁもうすぐ普通に登校できるのだから我慢だ。
「じゃあ邦月、次会える時はたぶん学校だな」
「はい先生。また」
英語に優れていると知っているのになぜわざわざ来てまで復習しにきてくれるのだろうか。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます！これからもバンバン頑張ります！一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします！！ (2019年5月11日 19時) (
レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです！一気に読んだんですけどすっごい楽しいです！これからも頑張ってください！ (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー！ありがとうございます！そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます！ (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください（切実）めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください！！！ (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます（泣）尊敬に値するようにもっと文才磨きます！ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます！ (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月25日 13時
