7 ページ8
近い…とは言っても歩いて２０分の距離。
この商店街とオレの会社の最寄駅は沿線が違う。
今日はたまたまこっちの方に用があったから来たものの、普段はここまで足を延ばすなんてことはない。
オレはレトロな外観のその店を一度だけ振り返ると会社に向かって足早に歩きはじめた。
相葉さんには悪いけど、たぶんもう来ることもないだろう。
会社に戻ればやることは山積みでPCを前にため息をつく。
習慣でカップに手を伸ばし、そういえば今日はまだコーヒーを淹れていなかったことに気づいた。
若干イライラしながら立ち上がって給湯室に向かう。
いつものインスタントコーヒーを適当にマグカップに入れると上からお湯を注いだ。
途端に香るコーヒーの香ばしい香り。
スプーンでかき混ぜてカップに口をつける。
その途端、オレは思わず眉間にしわを寄せていた。
いつもと変わらない味のはずなのに、ただの色のついたお湯にしか思えない。
香りだってちゃんとしてるのに、美味しいとは思えなかった。
「まあ、インスタントだもんな…」
丁寧に淹れたものとは違って当然だし、作業しながら飲むんだからこれでも一向に構わない。
そのはずなのに、なぜかあまり食指が動かなかった。
それでもそのカップを手に再び席につく。
早く終わらせないと締め切りに間に合わない。
仕事に集中しはじめると味なんて構っている余裕はなくて、勝手にカップに手が伸びる。
一区切りついて気づけば、中身を全て飲み干していた。
と同時に、胃のあたりがシクシク痛む気がする。
おかわりを作りに席を立とうとして、オレはふとさっき店でもらった茶葉のことを思い出した。
「ま、せっかくだし…」
茶葉の入った袋と空になったカップを手に立ち上がる。
給湯室に向かいながら、オレは相葉さんの笑顔を思い出していた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 502人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LILY(プロフ) - まれさん» まれさん、わぁ！こちらこそありがとうございます(≧∀≦)のんびりしたティータイム、素敵な場所に美味しいもの。そしてちょっとしたドキドキ、ワクワク。お話の中のニノを羨ましく思いながら書きました（笑）一緒に味わっていただけて幸せです。コメントもありがとう！ (2020年6月2日 3時) (
レス) id: de76939beb (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - 穂子さん» 穂子さん、ありがとうございます！私の方こそいつも読んでくださって感謝の気持ちでいっぱいです。紅茶やお菓子をお供に少しでもリラックスして楽しい時間を過ごしていただけたのならうれしいな。後日譚もまたぜひお楽しみに！コメントありがとうございました(≧∀≦) (2020年6月2日 3時) (レス) id: de76939beb (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - ちえさんさん» ちえさん、お粗末さまでした♪Tea Time、楽しんでいただけてうれしいです(≧∀≦)どこにどんな出会いが転がっているかわかりませんからね（笑）ひょんなことから素敵な出会いを見つけたニノはラッキーだったに違いありません。後日譚、ぜひお楽しみに！ありがとう♪ (2020年6月2日 3時) (レス) id: de76939beb (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - みゃーさん» みゃーさん、こんにちは♪コーヒーも紅茶も気分で楽しめたらいいですよね♪日常にほんの少しだけ変化や彩りが加わる気がします。こんな時だからこそ余計にわずかなことでも楽しみに変えられるのかも。こちらこそいつも読んでくださってありがとう！Enjoy Tea Time♪ (2020年6月2日 3時) (レス) id: de76939beb (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - satoshiikoさん» satosiikoさん、いつもありがとうございます♪お名前ちゃんと覚えていますよー！お山が出てこないお話ばかりでごめんなさい…心苦しいです。紅茶専門店、きっとこのお話よりもずっと詳しく楽しいと思います。早く行けるといいですね！米国はコーヒーばかりなので残念… (2020年6月2日 3時) (レス) id: de76939beb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LILY
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/Colorfulstory/
作成日時：2020年5月9日 5時
