８８: クールダウン ページ38
「はぁ……」
佐「なんだ月永ぁ、授業始まってんだろ」
気怠げに名前を呼ぶその声に俯くと、先生は珍しく真剣な顔をする。
佐「天祥院、って言った方が良いか」
「別にどっちでも…」
再びため息をついて、座り心地の良いソファに寝転がった。
レオ、泣いてるかな……だとしたら泣かせたのは俺だ。何で泣きそうだったのかはよく分からないけど、俺以外に泣かせる奴なんて居ないし
悶々と考えていると、ベッドを隔てるカーテンが静かに引かれる。
英「兄さん？何でここに…授業は？」
「英智こそ。また体調崩したのか？あ、もしかしてさっきの騒ぎで疲れさせたか」
英「ははっ、ちょっとね…。先生、少し話していても？」
佐「好きにしろ〜」
律儀にお礼を言った英智が、上着を着ながらソファに歩み寄ってくる。寝転がったままで少しずれてスペースを作った。
腰掛けた英智がさっそく話しかけてくる。
英「何でここに？」
「レオを泣かせて…頭冷やしに」
英「月永くんを……まあ、何となく想像できるよ。ごめんね、僕が不甲斐なかったばかりに」
苦笑してその言葉を否定しても、英智は拳を握って顔を顰めている。別に不甲斐ないとかじゃないし、気にしないでいいのに…
起き上がって隣に座り直し、他にも何かあるのか聞いた。
英「あ、そうだ。……家には、帰って来てくれるの？」
「あぁまあ、まず一度顔出すよ。家に帰るとなると義父さんと義母さんに話さなきゃいけないけど」
英「本当っ？帰って来てくれるの？」
「だって俺は英智の兄だし。跡を継ぐのは英智にしても、俺も家業は手伝わないとな」
そう言うと英智は不思議そうな顔をする。
英「跡を継ぐのは兄さんじゃダメなの？」
「その為の教育を10年も受けてないんだから継がないよ。手伝いはするだろうけど」
英「兄さんなら少し勉強すれば平気だと思うけど…」
さも真面目にそんなことを言われるので、勘弁してくれと苦笑した。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2019年12月14日 3時
