さくらの営み 5【オロチ】

二百六 待ってる ページ6

しばらくしてようやく離すと私とオロチさんはぎょっとした。


「……君たちおかしいんじゃない。俺は敵なのに……」


黒い顔がまるでペンキがハゲるように、肌色がところどころ現れていた。


「おかしいですよ、でもそれで良いじゃないですか。こうやって泣くのも誰かに抱きしめて貰うのも、今生きているからできることなんです」


「俺は生きてなんかいない‼」


黒雨は私の両肩を強く突き飛ばした。

尻もちをついただけだったが、心が少しだけ痛かった。


「どうしてあの方と同じことを言うんだよ……っっ‼また裏切るつもりなんだ‼こんな苦しみ分かるわけないよっっ‼」


黒雨から手の影が床に、壁に、天井に広がり、あっという間に部屋は真っ暗になった。


「A、これ以上は危険だ」


オロチさんは私を肩に担ぐと扉の方へ向かった。


「私、待ってるから……っっ」

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