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湊side
「おれも行く」
震える声で、でもキッパリそう言った蓮に、おれは小さく頷きを返した。
「じゃあオレが先生に言っとくから。陵は頼んだ」
代わりにひろが残って先生に説明することになって、おれと蓮は急いで図書室を飛び出す。
資料室は、図書室とほぼ反対の位置。
旧校舎の1番端にある、狭い教室だ。
電話は一応まだ繋いだままだけど、物音は少しもしない。
本当にヤバいのではないのか。
バクバクと鳴る心臓がうるさくて、息がしづらい。
──どうしよう、陵がこのまま。
「湊、息、早くなってる」
「っ、」
蓮の声に、顔を上げる。
少し前を走っていた蓮が、振り向いて足を止めていた。
言われてようやく、息がおかしかったことに気がつく。
幸い意識してゆっくり呼吸をすれば、もとに戻ったけれど。
「ごめん、ありがとう」
もう大丈夫、の意味を込めて笑ってみせると、蓮はそっと目を伏せた。
そのまま小さく、首を振る。
「謝らなきゃなのは、おれの方だろ」
ごめん。おれが、陵の体調に気付いてれば。
そんな言葉を苦しげに呟いた蓮に、おれはゆっくり首を振った。
「気付けなかったものはしょうがないよ。蓮が悪いわけじゃない」
強いて言うのなら、ちゃんと言ってくれなかった陵が悪い。...もっと頼ってくれたって良いのに。
「今はとりあえず急ごう」
過ぎてしまったことを悔やんだって責めたって、どうしようもない。
しょぼんとした蓮の肩を軽く叩き、おれたちはもう一度走り出した。
バタバタと慌ただしい足音が、廊下を駆け抜ける。
旧校舎に入ったところでちょうど、授業開始のチャイムが鳴り始めた。
一段飛ばしで階段を駆け上り、目的の資料室へと急ぐ。
「っあけるぞ、」
先に資料室の前に到着した蓮が、弾んだ息を整えながら言う。
おれが頷く前に彼はもう、扉にかけた手に力を入れていた。
「っ、開かない...!」
ぐぐぐ、なんてそんな効果音がつきそうな絵面。
立て付けの悪い扉が災いして、なかなか開かないらしい。
...そういえばいつか、ひろと陵がこの部屋に閉じ込められていたことがあったっけ。
確かそのとき、陵は狭いところが苦手だと聞いてー...。
「っあいた!」
ガタン、と一際大きな音と共に、立て付けの悪すぎる扉がガタガタと嫌な音を出しながら開いていく。
埃っぽい、薄暗い室内に目を向けて、おれと蓮はほぼ同時に息を呑み、ほぼ同時に声をあげた。
「っ陵!」
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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時